第7章 予期せぬ出来事
逢坂さんから聞かされる話に、思わず耳を疑った。
あの八乙女社長が···引き抜きを持ち掛けて来た?
それも、四葉さんの素性を調べ尽くしてまで?
嘘···だと、思いたい。
けど、逢坂さんや四葉さんが···そんな嘘を言うとも思えない。
環「だから、ボス···早くデビューしたい」
紡「···社長!」
社長は、どう考えているんだろう。
少し前までは、ちゃんと育ててからじゃないと···とか、言ってたけど···
小「うん、いいよ」
そっか、やっぱりまだ······えっ?!
い···いいよって言った?!
予想外の展開に、思わず社長の顔を見る。
小「僕からも言おうと思ってたんだ」
陸「本当ですか?!」
小「うん、今がタイミングだと思うよ。それに八乙女が動いたなら、悠長な事は言ってられない」
それは···そうかも知れないけど···
私は八乙女社長の所にいる時、何度となくそういった感じの引き抜きがされるのを目の当たりにしている。
小さな事務所で育てていたデビュー前の新人、違うジャンルにチャレンジしようと方向性を変える直前の俳優。
そういう人たちを、半ばムリヤリ移籍させては···というのを、見て来た。
でも今回のは···何か違う仕掛けがある様な気もする。
小「逢坂壮五くん、四葉環くん···キミたち2人をデビューさせる」
紡「···え?」
逢坂さんと四葉さん···だけ?
ナ「ワタシたちは?」
一「7人で売り出すのは諦めたと言うことですか?!」
紡「ごめんなさい···社長はたまにテストみたいな事をするんです。そうですよね?本当は2人だけでデビューさせるつもりなんてないんですよね?」
そうだ、前に万理から少し聞いた事がある。
紡ちゃんがみんなと初顔合わせの日に、これから芸能事務所で働く人間として、どれくらいの目利きがあるか···という、人柄を試す様な事があったという事を。
じゃあ、この2人だけをデビューさせるっていうのも、もしかしたら···みんなの気持ちの、テスト?
淡い期待を胸に起きながら、社長がなんて言うのかを待つ。
小「本来なら、ゆっくり時間をかけながら7人揃ってデビューさせてあげたかった。だけど、八乙女に目を付けられてしまった···彼は容赦のない男だ」
だけど社長から出た言葉は、期待とは違った···