第7章 予期せぬ出来事
小「話って言うのはね、まぁ、キミの仕事の話なんだけど···あ、とりあえず座って?」
社長に促されて、ソファーへと腰を下ろす。
小「今日少し営業をかけて来たんだけど、早速その中からいい返事を貰う事が出来てね。これなんだけど···どうかな?」
ピラリと渡された資料に目を落とせば、そこには飲料水のCM撮影についてが書いてあって。
『CM、ですか?』
小「そうだよ~。まぁ、スポーツ飲料のCMでね···学生をメインにしたいらしくて、撮影は恐らく···衣装として制服とか着るかも知れないんだけど」
制服···?!
『あ、あの!制服って、まさか学生服の制服の事ですか?!例えば一織さん達くらいの年齢の···とか?』
良く考えれば、制服と言われたらそれくらいの年齢層しかないんだけども。
私···年齢的にセーフなのかな?!
なんちゃって高校生···とかにならない?!
小「僕は全然、心配ないと思うけど?」
『単発ドラマならまだしも、CMで学生服姿って···私、大丈夫でしょうか···』
新商品、スポーツドリンクタイプの微炭酸飲料でフレーバーは3種類···そこだけ見れば、誰でも出来そうではあるけど。
小「こういう言い方はズルいかなって、思うんだけど···あの移籍会見の時の、八乙女の言葉···忘れちゃった?」
『八乙女社長の、ですか?』
小「そう、八乙女の。あの時、八乙女は愛聖さんの事を、白というのは簡単に何色にでも変わる。しかし逆はどうか?どんな色にも溢れるほどの白を加えてもそれは白ではない。ここにいる佐伯 愛聖は、他の誰がなろうとしても代わりにはなれない一人···とか。僕もその時に八乙女が言った言葉の意味は分かる。キミにはたくさんの可能性があるって事だよ」
たくさんの、可能性···
『あの、でも今はこのケガもあって』
小「それも大丈夫。よく見てご覧?撮影開始はまだひと月も先だよ。だからそれまでに少しでもケガを治せばいい···この仕事、やってみるかい?」
不安がないわけじゃない。
四葉さんに言われた事も、まだ胸に刺さったままでもあって。
だけど、仕事を選べる立場でも···ない。
『···宜しくお願いします、社長』
ジワリと痛む手首を押さえながら、ゆっくりと頭を下げた。
小「あと、岡崎事務所から連絡貰ったよ?」