第7章 予期せぬ出来事
❁❁❁ 壮五side ❁❁❁
紡「そうですか···そんな事が」
部屋を出て行った後、街中で八乙女プロダクションの社長に声を掛けられた事の全てをマネージャーに打ち明けた。
僕もマネージャーも、ここにいる誰もが知らなかった環くんの秘密。
どうしてあんなにテレビに映ることに執着していたのかという理由。
もっと早く、環くんが打ち明けてくれてたら。
そう思いながらも、僕にだってまだみんなに打ち明けていない事がある事に胸が苦くなる。
だから、環くんだけを隠し事について責めることは出来ない。
『戻りました···』
静かめにドアが開き、遠慮がちに愛聖さんが顔を出す。
紡「お帰りなさい···あの、ケガの状態は?」
ケガ?
「愛聖さん、ケガしたの?!」
『まぁ、ちょっと事情があってというか···』
そう言いながら愛聖さんは僕たちに向けてゆっくりと腕を前に出した。
『ほんのちょっとですけど、ヒビというか···診断結果は、一応···骨折って』
「骨折?!いつそんなケガを?!だってさっきは何も」
『ちょっとしたトラブルがあって、それも私が強引に四葉さんを引き留めようとしたからで···えっと、』
「環くんをって、じゃあ···」
まさか愛聖さんのケガの原因って、環くんなの?
喉まで出かかった言葉が僕の息を詰まらせる。
「マネージャー、僕にもちゃんと説明して」
ひと呼吸空けて、マネージャーを振り返る。
紡「実は···」
悲しげに目を伏せながら言うマネージャーの話に動揺が走った。
「そ、んな···事が」
なんて言っていいのか、言葉が上手く紡げない。
『四葉さんのせいじゃないんです。私がムリに引き留めたから、それで···だから四葉さんを責めたりしないで下さい』
「環くんを庇いたい気持ちは分かるよ。だけど、この件に関しては環くんにも責任がある。だから、ちゃんと環くんに謝らせないと彼の為にもならないよ」
『でも、私にも』
三「はぁっ?!なんて言ったんだよいま!!」
愛聖さんが何かを言いかけた時、レッスン場へと続くドアの向こうから三月さんの声が聞こえて思わずみんなでそっちを見る。
紡「何か···あったんでしょうか」
「分からないけど、とにかく行ってみよう」
そう言って僕はドアに近付いた。