第7章 予期せぬ出来事
❁❁❁ 八乙女宗助side ❁❁❁
ー それではリクエスト曲をお送りします。曲は日本の女性を魅了し続けるTRIGGERの··· ー
FMから聞こえたTRIGGERの紹介に苛立ちを覚え眉間に皺を刻む。
なにが日本の女性を···だ。
そんな狭い世界だけの通り名は必要ない。
今一度、奴らには再教育が必要だな。
預かり者の天はともかく。
龍は、いついかなる時も毅然とした態度で対応出来るように。
そして、楽も···だ。
いつまでもあんな店の手伝いを名乗り出る様じゃ、ヤツもそこまでだ。
もっと高みへ。
もっと広い世界へ。
成功への道に光を照らし続ける為には、手段を選ばない。
それが私がここまで築き上げて来たやり方だ。
その為には、小鳥遊が微力ながらも育てているあのグループを···潰す。
如何なる事情があったとして、佐伯 愛聖 をくれてやったんだ。
···文句は、言えないだろう。
フン···と小さく鼻を鳴らし、ゆっくりと流れていく窓の外に目をやれば、少し離れた前方から見覚えのある2人組が見えた。
あの2人は確か···そうだ、この間野外ライヴをテレビ中継された時、堂々と抜かれていた小鳥遊の所の···
レッスン前なのか揃いの物を身に纏ってはいるが、間違いない。
あの2人···特にダンスを披露していた方は多少の調べはついている。
揺さぶるなら、今だ。
「おい、車を停めろ」
「ここでですか?ここは駐停車禁止区域で、」
「停めろと言っている。迎えが必要になったら呼んでやる···どこかで待機していろ」
「···承知しました、社長」
ハザードランプを付け端に寄せられた車から、素早く降車する。
前方からは、何やら言葉を交わしながらもこちらに進んで来る2つの人影。
その足並みは私の姿を正面に捉え、やがて同時に足を止めた。
「アイドリッシュセブンの逢坂壮五、それから···四葉環だな?」
環「···誰?」
「八乙女プロダクション社長、と言えば分かるだろう」
壮「八乙女···って、TRIGGERの!」
ハッとした顔を見せながらも、姿勢正しく私を見る姿に口端を上げる。
「君たち2人に話したい事がある」
壮「話って言うのは···?」
「ここで話すべき事ではない。落ち着ける場所へ案内しよう」