第7章 予期せぬ出来事
陸「環!」
逢坂さんの後を追って出て行く四葉さんを、七瀬さんが追おうとする。
大「待てリク!今はそっとしとけ。それよりこっちの方が優先だ···立てるか、愛聖?」
四葉さんに振り払われた勢いで床に倒れた私に、二階堂さんが手を差し伸べてくれる。
『大丈夫です、ちょっとびっくりし···』
立ち上がろうと手を着いた時、手首にビリッとした痛みが走り思わず押さえ込む。
予想外の痛みに思わず眉を寄せてしまう。
三「おい、ケガしたんじゃ」
『ホントに大丈夫ですから』
一「あなたの大丈夫はアテになりません。この前の熱を忘れた分じゃないですよね?見せて下さい」
一織さんにそう言われると抵抗しきれる訳もなく···おずおず、といった感じでズキズキと脈打つように痛みが走る手を出した。
一「これは痛いですか?」
『大丈···い、痛っ』
ゆっくりと動かしながら一織さんがケガの状態を見て、1番痛む角度で瞬きを止めた。
一「マネージャー、すぐ大神さんを呼んで下さい。兄さんは何か冷やすものと固定する物を探して」
陸「固定?って?」
大「イチ、それってまさか···」
一気に静まり返る空気に、一織さんがゆっくりと瞬きをした。
一「最悪、骨折の可能性があります。私は医師ではないので確定は出来ませんが、もしもに備えて冷却と固定を」
骨折···ウソ、でしょ···?
『ちょっと転がった位で、そんな骨折とかは···』
一「あくまで推測です。ただの打撲や捻挫なら儲けものです···と言った域です」
大「マジか···ミツ、リク急げ。マネージャーも万理さんに連絡して。愛聖は他にケガがないかイチにちゃんといろいろ調べて貰え。痛いところか他にもあるなら、誤魔化さずにちゃんとイチに言えよ?」
『···はい』
なんとか自力で立ち上がり、一織さんとナギさんに付き添われながら部屋のソファーへと誘われる。
大「とりあえず、タマが帰って来たら説教だな」
珍しく憤りを垣間見せる二階堂さんが、腕組をして壁に凭れる。
『待って下さい。これは、私の不注意で起きたことです。四葉さんには何も責任はありません。私が勝手に転んでこうなっただけです』
庇うわけじゃない。
きっかけはそうであっても、この事でメンバーが上手く纏まらなくなってしまう方が···怖かった。