第7章 予期せぬ出来事
万「まぁ、電話もしたし様子を見に行ったのは確かだけど。それについては見返りを求めてないから。ほら、愛聖が子供の頃に俺が熱を出した時も同じだっただろ?」
『そうかも知れないけど、あれはほとんど母さんがご飯作ったり洗濯したりだから私は特になにも』
万「あれ?万理お兄ちゃんが寂しくないようにって、ずっと手を握っていたのは誰だっけ?」
『さぁ?千じゃない?』
この話は前に社長にもしたから、それが誰の事なのか社長は気付いてる。
なのに、社長は笑い出して···
小「ウチのイケメンな有能事務員の万理くんと、いまをときめくRe:valeのメンバーが手を繋いで過ごす時間···何だか少女漫画のワンシーンのようだね」
そう言われて思わず、そんなシーンを想像して盛大に笑ってしまう。
『万理と千が···そういう関係だなんて』
万「愛聖、頼むからその豊かな想像力にフタをしてくれ。それから社長?俺は当然ですがノーマルですよ···ちゃんと女の子が好きですからね?」
小「ん~、僕が今よりもう少し若くてイケメンだったら、万理くんと手を繋げるのかな?いや、ちょっと照れちゃう···」
万「あの、俺の話聞いてます?」
いつもの様にじゃれ合う社長と万理の会話でひたすら笑ったあと、そう言えば···と気付く。
『社長、もしかしてこれからお仕事があるんじゃないですか?万理が来た時、確かそろそろお時間···とか言ってましたよね?』
私がそう言うと社長はハッと腕時計を見て、バタバタと机の上を片付け出す。
小「そうそう、これから大事なお仕事があるんだった。しっかり愛聖さんを売り込んで来るから期待してて?」
『私、ですか?』
小「そうだよ~?僕は八乙女ほど有能じゃないけど、いつまでもキミのスケジュールを真っ白にしておくほどのんびり屋でもないからね。こないだのTRIGGERとのCM経験を突き出して、どうですか!これが我社の佐伯 愛聖 です!って胸張って来るから」
『はい!よろしくお願いします!』
勢いよく頭を下げて元の姿勢に戻ると、クラリと目眩を感じてしまう。
『あっ、と』
万「おいおい···元気になったとは言え、まだ病み上がりには違いないんだから」
支えてくれる万理の腕に甘えながら、大丈夫だからと笑って見せた。