第7章 予期せぬ出来事
そわそわして落ち着かなかった自分を少し恥ずかしいと感じながら、長椅子に腰を落とした。
診察室の中からは、特に何も聞こえては来ず静かだなと···また息を吐いた。
のに。
『ヤダ~!!怖い!ムリ!帰りたい~!万理助けて!!』
紡「愛聖さん落ち着いてください!」
···静か、だったよな?
紡「大神さん、一織さん。愛聖さんが···」
遠慮がちに開かれたドアの隙間から紡さんが俺たちを呼ぶ。
一「何があったんでしょうか···大神さん、行きましょう」
なにがって、俺は想像はつくけどね。
診察室へ入れば、診察用のベッドに蹲り頭から毛布をガッツリ被る愛聖がいて、その傍らには困り果てた医者と看護師が立ち尽くしていた。
「愛聖、子供じゃないんだからいい加減に観念しなさいって」
毛布の上からポンッと手を乗せ言ってみても、天の岩戸の如く出てくる気配はない。
一「仕方ありませんね···相手が病人ですから、あまり手荒な事はしたくはなかったのですが」
ため息混じりに言いながら一織くんが毛布の端を掴み、一気にそれを剥ぎ取る。
『さ···寒い···』
紡「一織さん?!愛聖さんは病人なんですよ!」
一「佐伯さん、駄々を捏ねるのもいい加減にして下さい。おとなしく治療を受けないのであれば、私が毎回···」
···ん??
最後の方は一織くんが愛聖に内緒話をしてよく聞こえなかったけど···なんて言ったんだろう?
聞かされた愛聖のあの様子からして、多分とんでもない事っぽいけど。
だけど、そのおかげで愛聖がおとなしくなったんだから今は良しとしておくかな?
診察室から処置室へとまた一織くんが抱えて運び、点滴が施される。
紡さんと一織くんは待合室にいると言って部屋を出て行き、今は俺だけがベッドの側で様子を見てる。
薬が聞いてきたのか静かな寝息を立てる愛聖を見て安堵の息を漏らし、そう言えば···と自分が熱でダウンした事を思い出しながら、愛聖の手をそっと握った。
こうすると、安心するって言ってたっけ。
ピクリと反応して握り返して来る手に口元を緩ませながら、まだ熱いままの頭をゆっくりと撫でた。