第7章 予期せぬ出来事
「あれはホントに痛いですからね。まぁ、なかなか経験出来ない事ではありますけど···天井から照明が落ちて来てヒットするとか」
何気なく過去の古傷を指先で触りながら肩を竦めて見せた。
「そんな事よりも、今は愛聖が最優先ですよ社長?って事でひとっ走り行ってきます」
小「行ってらっしゃい。万理くんも慌てず冷静に運転してね?」
社長に見送られながら寮へ戻り···まぁ、予想通りの展開を繰り広げてくれる愛聖を説得していると
一織くんや壮五くんまでもが部屋に入って来た。
三「愛聖、喉乾いたんだろ?ほら、常温のスポーツドリンク持ってきたから飲んどけ?」
飲み物を取りに行ってたという三月くんが、ペットボトルのストローを愛聖に向けながら水分を取らせてくれる。
『三月さ~ん···万理が···万理がイジワルするぅ』
「あのねぇ···全く、熱が高すぎて自分でも何言ってるか分からないんだろうな」
三「だろうなぁ···一織が子供の時に高い熱出してこんな風になってた事あったしなぁ」
へぇ···あの一織くんが子供の頃はこんな感じだったのか。
とか、考えてる場合じゃないか。
「とにかく、抱えてでも連れて行くしかないな」
無理やりってのは性にあわないと思いながらも抱き上げようとすれば、また愛聖は嫌がって抵抗を始めた。
『ヤダ!絶対ヤダ!万理なんか嫌い!』
「またそんなこと言って···」
一「仕方がありません。私が説得しましょう」
そう名乗り出た一織くんは見事に愛聖を黙らせ、あっという間に抱きかかえてしまった。
さすが···と言うべきか、俺が愛聖に甘いのか···ハハッ、まぁ後者かな。
バタバタとしながら愛聖を抱えた一織くんごと車に乗せ、快く同行してくれる紡さんをナビシートへと乗せ病院へと車を走らせた。
病院の待合室で、一織くんと2人で診察が終わるのを待つ。
さすがに俺たちは中に一緒に入る訳には行かないから、そこは紡さんに頼んだけど···
病院で待つっていうのは、こんなにも時間が長く思えるものなんだと何度も時計と診察室を見ながらため息を吐いた。
一「大神さん、落ち着いてください。私たちは出産を待つ家族ではないんですから」
ピシャリと一織くんに言われ、苦笑を浮かべる。