第7章 予期せぬ出来事
❁❁❁ 壮五side ❁❁❁
愛聖さんから借りてたDVDを返そうと部屋に行ったんだけど、まさかその本人が高熱を出してるなんて思わなかった。
少し風邪気味で···とかなら、常備薬飲んで休んでいれば状況は良くなるかも知れないけど。
でも、あの感じだと···結構な熱だったし。
愛聖さんはひた隠しにしてたつもりみたいだけど、どうしてだろう。
あ、もしかして。
陸くんの体のことを気にして···とか?
それならそれで、もっと僕たちに頼ってくれてもいいのに···と思うんだけど。
僕じゃ···頼りないのかな···
万理さんには···あんなにも甘えたりとか、わがまま言って困らせたりしてるのをいつも見てるのに。
でもそれは昔馴染みだから···?
だとしたら、大和さんは?
大和さんは僕たちのリーダーだし寮の責任者でもあるから、万理さんとは少し違った角度で仲がいいと思う。
三月さんだって、みんなのお兄さん的な立場でもあるから···愛聖さんは頼ってた。
じゃあ···僕は?
僕は大和さんみたいにリーダーとか、責任者とかじゃないけど、でも···愛聖さんと年は同じだし大人···の仲間入りはしてる。
大和さんや三月さんとの違いは、なんだろう。
考えれば考えるほど、モヤモヤの渦に巻き込まれて行く。
「はぁ···」
壁に寄りかかり、大きなため息を吐く。
ダメだ。
今はこんな事をいつまでも考えている場合じゃない。
熱を出している愛聖さんを最優先にしないと。
···熱?
そう言えばさっき、僕が熱を見るのにおでこをくっつけた事を思い出す。
体温の高さを感じ取った直後、バッと体を引いた愛聖さんの様子は熱のせいでおかしいのかと思ったけど。
僕は女性に対して···なんて事をしてしまったんだ?!
無意識とはいえ、あまりにもそれは大胆行動だった事に気付き体温が急上昇して行く。
パタパタと顔を扇ぎながら、とりあえずこの時間キッチンにいる三月さんに事情を説明して指示を受けようと足を向けた。
これくらいで動揺してしまうから、愛聖さんからは頼ったり甘えたりして貰えないのかも知れない。
そう思うと、少しだけ気持ちが落ちてしまうけど。
今はそれ所じゃないから···