第7章 予期せぬ出来事
瞬きをする度に距離が縮まる逢坂さんとの距離。
それはあっという間に、距離感ゼロにまで達していて。
最後の瞬きをしたあと目を開ければ、目の前にはキメ細やかな逢坂さんの肌と、今にも届いてしまいそうな唇の距離に息が止まる。
『おっ、逢坂さん?!』
裏返ってしまう声で名前を呼びながら、跳ねるような勢いで体を離した。
ただでさえ熱を持った体が更に熱くなり、グラりと体が傾いてしまう。
壮「驚かせてしまってゴメンね···子供の頃、今みたいに熱があるかって見て貰ってたから、つい···だけど、愛聖さん熱があるみたいだね。それも、相当高そうだけど···」
今みたいにって···そこそこ大人な私達が熱を確認するのにやったら誰でもビックリするやつですよ?!
興奮気味の頭がズキズキと痛みだし、思わず両手でこめかみを押さえてギュッと目を閉じる。
傾いたまま動けずにいる私を支えてくれながら、逢坂さんが心配そうな顔を見せた。
『だ···大丈夫だからホントに。これくらいじゃ···人間死んだりしないし!ホント、平気だから』
壮「僕には、とても平気そうには見えないんだけど。こういう場合は、万理さんに連絡すればいいのかな···それとも、社長の方が···」
···万理?!
···社長?!
ダメダメダメ、それは絶対ダメなやつ!!
少し前まで睡眠時間を削るほどハードスケジュールだった万理や社長。
それなのに、いや、それだからこそ···余計な心配はさせられない!
『あの、逢坂さん?···寝たら治ると思うから、その、お気遣いなくというか、この通り元気はあるから大丈夫です』
壮「僕にはそうは見えないんだけどな···だけど、愛聖さんがそこまで言うんなら、僕にも少し考えさせて」
『考えるって、なにを?』
一瞬黙り込む逢坂さんを見れば、その表情は硬く···
壮「いいから黙って。とりあえず横になって体を休めて···分かった?」
今まで見たことがない逢坂さんの···ちょっと怒った時の一織さんみたいな顔や声色に負けて、されるがままにベッドに寝かされてしまう。
壮「それじゃ、ちょっと大人しく寝ててね」
『あ、でも他言無用で、』
壮「いいから···寝てて、ね?」
『···はい』
硬い表情を帰ることなく言う逢坂さんに、もはや逆らう事は出来なかった。