第7章 予期せぬ出来事
とにかく、もし熱が···とかなったらみんなに伝染したら困るし、ここは部屋に引き篭ってしまおう。
案外、ちょっと寝たら怠さも治るかも知れないしね。
飲み終えたカップを洗って片付け、部屋に戻ってベッドに体を沈める。
ぼんやりと天井を見つめながら、歌詞の事を考える。
いくつかのテーマや、曲のストーリー性を思い浮かべてみる。
これまでに浮かんだワードだって、忘れないようにメモを取ってある。
どのワードを、どんな所に繋ぎ合わせて行くか···そこが難題なんだよなぁ。
千はどうして、あんな風にいろんなメロディーや詞を生み出せるんだろう。
···謎だ。
考えてもいいアイディアが浮かばないし、ベッドに入ったせいか眠気も···
心做しかゾクリとする体を温めるように毛布を被り、既に抵抗出来ない眠気に攫われるように静かに目を閉じた。
どれくらい眠っていたんだろう。
治まらない寒気と怠さで目を覚ました。
いつもならスっと起き上がれるのに、思うように力が入らなくてなかなか起き上がれない。
マズイなぁ···これって本格的に熱があるっぽい。
ようやく上半身だけを起き上がらせ、大きく息を吐いた。
壮「愛聖さん、いま大丈夫?」
ドアをノックする音と一緒に、逢坂さんの声が聞こえる。
明らかに部屋の電気がついてるのに、居留守にしたら悪いよね···
『どうぞ、開いてます』
返事をすれば、逢坂さんらしく、失礼します···と静かにドアが開けられ、顔が合うと少し驚かれてしまう。
壮「あ、ゴメンね。もしかして僕が起こしちゃったかな?この前貸して貰ったDVDを返しに来たんだけど···」
『ちょうど起きたところだから気にしないで下さい』
遠慮がちに差し出されるそれを受け取ろうと立ち上がろうとしても、上手く立てず···
壮「僕の気の所為じゃなければ···だけど。もしかして具合いが悪いんじゃ?」
『確かにちょっと怠さはあるけど、とりあえず生きてるし大丈夫です』
力なく笑って言えば、逢坂さんはほんの少し眉を寄せて何か考え込んでしまった。
もしかして···私が熱があるとかバレたら、一織さんみたいに厳しく何かを言われてしまうのかも···
壮「愛聖さん、ちょっと失礼します」
逢坂さんと一緒に空気が動いた、その瞬間···