第6章 BLESSED RAIN
紡 ー 壮五さん! ー
インカムからも、紡さんの声が聞こえる。
紡 ー 音響、照明復旧します。音源は壮五さんのソロパートの前からになりますので、準備をお願いします! ー
壮「···了解」
インカム越しに逢坂さんの声がして、そして。
紡「音、入ります!5秒前···」
紡さんのカウントダウンが始まると同時に、逢坂さんが動き出し会場に音源が戻った。
四葉さんも音源が戻った事でダンスをキメて終わらせ、歩み寄る逢坂さんとすれ違い様にハイタッチを交わす。
あとは、ここから上手く繋がれば···
そんな心配をよそに、会場いっぱいに逢坂さんの歌声が響き渡る。
『凄い···綺麗な繋がり···』
髪や服から流れ落ちる雫も振り払うことなく、ステージに見入ってしまう。
濡れてしまって張り付いたシャツも、靴から水が染みてびしょ濡れの靴下も···そんなのはもう、どうでもいいと感じてしまう。
それほどまでに、ステージの上のみんなが輝いていたから···
ハプニングに見舞われた曲も無事に終わり、みんなが応援してくれるファンに向けて大きく手を振る。
ー アンコール!アンコール!アンコール!··· ー
やっぱり、そう言いたくなるよね。
だって、私だって···もっとたくさん、みんなが輝く姿を見ていたいと思うから。
終わることのないアンコールを求める声を聞きながら、紡さんの側に歩み寄る。
紡「凄い反響···でも、どうしたら···」
戸惑いを見せる紡さんの肩に手を置き、笑ってみせる。
『真っ暗闇のハプニングで心配掛けちゃったんだし、いいんじゃない?』
インカムのマイクを口元に当てながら、みんなの顔を見る。
『社長、佐伯です。社長?···そちらにも会場からの声、届いてますよね?』
小 ー 聞こえてるよ、会場からの声もちゃんと届いてる ー
『それなら、社長もOKくれますよね?』
小 ー あぁ、もちろんだとも。紡くんに代われるかい? ー
社長の言葉に私はインカムを外し、紡さんへとバトンタッチをした。
紡「はい···はい!!分かりました!···皆さん聞こえますか?社長からアンコールの許可出ました。曲目は···」
ステージのみんなに負けないくらいの輝かしい笑顔で応対する紡さんを見て、私はその場を離れてステージへと視線を移す。