第6章 BLESSED RAIN
小 ーあと···僕もハグ&キスした方がいい? ー
『き···聞いてたんですか?!』
小 ー 聞こえちゃったっていうか···ねぇ、万理くん? ー
万 ー インカムからダダ漏れ ー
恥ずかし過ぎて何も言えない!!
微妙な空気で社長との会話を終えてインカムのマイクをずらし、ステージを見上げたところで、四葉さんを照らすスポットライトがついた。
真っ暗なステージの中央に、四葉さんが立っている。
なにが起こるんだろう。
そう思い始めた時に、四葉さんが音のない中でダンスを始めた。
ナ「Hands Up!」
ナギさんの声?
それに、ステージからはみんなが手拍子をする様子が伺えて。
···なるほど。
事態が落ち着くまで、四葉さんがダンスで繋いでくれてるんだ。
最初はまばらに聞こえていた客席からの手拍子も次第に大きく纏まり始め、その場所も···四葉さんのカラーで光り輝き出す。
『キレイ···』
思わず呟いてしまった自分に驚いて、誰が見ている訳でもないのに口元を隠す。
大きな手拍子の中で四葉さんがダンスを続け、それに見入っていると、背後からバタバタと足音がして振り返る。
『紡さん!···大丈夫ですか?!』
紡「愛聖さん?!どうして?!」
『詳細は後で。それより、紡さんはどうしてここに?』
ハァハァと息を切らせる紡さんの方へ歩きながら、社長に紡さんと合流したことを伝えた。
紡「大神さんといろいろチェックに走って、音源が無事なのを確認出来たんです。だからそれを、ここから皆さんにお伝えしようと思って···」
『音響機材が無事?じゃあ···』
紡「ライヴは続行出来ます。それにもうすぐ照明の方も復帰します。音源は準備が出来ているそうなので、あとはこちらからの指示で音を出して頂けるそうです」
紡さんの言葉を聞いて、ホッと胸を撫で下ろす。
ライヴ、続ける事が出来るんだ。
そう思うと、さっきまで何事もなかったハズの膝がカクカクと震え出してしまい、その場にしゃがみ込んだ。
紡「愛聖さん?!大丈夫ですか?!」
『だ、大丈夫。ホッとしたら急に···平気だから指示を』
紡「はい!」
紡さんと頷き合って、紡さんはスタッフ用の指示マイクのスイッチを入れる。
それに合わせて私も、しゃがみ込んだ時に外れたインカムを付け直した。