第1章 輝きの外側へ
突然の小鳥遊社長の言葉に頭のなかが混乱する。
確かに私は八乙女プロダクションを解雇されたから一般人と言えば一般人だけど。
だからと言って、すぐ別の所に籍を置くのはルール違反な気もする。
小「大丈夫、八乙女とはちゃんと話を通すから。彼とは良くも悪くも古い友人だからね。あんな風にいつもピリピリしてるけど、ちゃんと向き合って話せば分かってくれるよ」
どうしてこの人は、そこまでして私を?
小「君はまだ輝きのカケラを持っている。その小さなカケラを、僕に預けてみない?」
穏やかな笑顔を崩すことなく言われ、心が揺れる。
行く場所なんてない。
帰るところもない。
行く宛さえない。
そんな私に、居場所を作ってくれようとしてる。
そう思うと、この人に着いて行ってみようとさえ思えて。
『で···電話番位でお役に立つなら···よろしくお願いします···』
そんな言葉を言いながら頭を下げていた。
小「うん、引き受けた。でも僕は、君を電話番で終わらせるつもりはないよ?これからタイプの違う事務所で研修をして貰って、ちゃんと輝きの中へ戻してあげるから。今はまだ···その輝きの外へはみ出してしまっているけどね。大丈夫、僕を信じて?」
『はい···よろしくお願いします···』
もう一度頭を下げると、それまで張り詰めていたものが途切れ涙が溢れて来た。
小「おっと、泣かせるような事を言ってしまったかな?」
『いえ···すみません、なんか凄く緊張していたものが途切れたら、何だか気が緩んでしまって···』
小「そっか···でも、その涙さえ···いつかきっと、輝く時が来るから」
『はい···』
小「···と、言うことで万理くん?早速で悪いけど八乙女にアポ取って貰えるかな?急に訪ねて行っても大丈夫だと思うけど、彼女の立場もあるし正式に堂々と八乙女と向き合いたいからね」
万「分かりました。今日中にアポを取ります」
小「よろしくね?じゃ、話が纏まった所で···朝ご飯もお願いしていいかな?」
万「すぐ用意します!」
小鳥遊社長のほのぼのとした時間の流れに、つい、笑いが出てしまう。
同じ社長でも、八乙女社長とこうも違うものだろうかと比べてしまう程に。
ただ···八乙女社長も、本当は優しいって事は私もよく分かってる。
だからこそ、余計に泣けて来た。