第1章 輝きの外側へ
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
八乙女プロダクションが愛聖を解雇したと証明する書類を社長が穴が開くほど読み返してる。
···と、思ったら。
小「佐伯 愛聖さん。君、ウチの事務所に所属しない?」
「は?!」
『え···?』
想像もしていなかった社長の発言に、愛聖よりも先にオレが驚きの声を上げてしまった。
ニコニコと笑顔を崩さない社長を見てから、愛聖の顔を見ると···驚きのあまり固まっていた。
「社長、本気ですか?」
小「万理くん、僕はもちろん本気だよ。万理くんだって知ってるだろうけど、彼女はまだまだこれから先の輝かしい未来がある筈だ。それなのに八乙女が一時の感情でいらないと放り出すなら、僕が貰っちゃおうかと思ってね」
「貰っちゃおうって···愛聖はその辺にいる子猫じゃないんですよ?」
失礼だなと思いながらも、社長にそんな事を言ってしまう。
小「分かってるよ。でも、万理くんだって雨風強い日に可愛らしい子猫が路頭に迷っていたから、救いの手を差し伸べたんだろう?···と、言うことで君の意見はどうかな?」
『えっ?!あ、えっと···お言葉はとても嬉しいんですが、私は仕事自体がなくてクビになったんです。なので小鳥遊プロダクションに籍を置かせて頂いても···きっとご迷惑しか』
そうだ···
数ヶ月間、全くと言っていいほど愛聖はメディアに姿を出してなかった。
それ故の、事務所からの解雇。
小「どうして迷惑だと思う?僕が思うに、君はまだ輝きのカケラを持っているじゃないか。その小さなひとカケラを大事に胸にしまってる」
『で、でも!』
小「大丈夫、八乙女とはちゃんと話を通すから。彼とは良くも悪くも古い付き合いだからね。あんな風にいつもピリピリしてるけど、ちゃんと向き合って話せば分かってくれるよ。それに八乙女プロダクションに籍が残ってる君を移す訳じゃない。一般人の君を、ウチに誘ってるんだ···君の未来を、僕に預けてみないかい?」
社長、それプロポーズっぽいですよ···
そう思いながらもオレは、小鳥遊社長と初めて出会った頃の事を思い出していた。
ライヴ中の事故でケガを負い···これから先どうしようかと悩み迷っていたオレに、声を掛けてきた···社長の事を。