第1章 輝きの外側へ
ここを出よう。
たった一晩だけど、暖かい部屋と人肌の温もりと安眠。
これ以上を望んだら、きっと粋な神様だって罰を落とすかも知れない。
だからまた···ひとりになろう。
『お忙しい中、お話を聞いて下さってありがとうございました。私はこれで失礼させて頂きますので、どうか···ごゆっくり···』
出来るだけ失礼のないように挨拶をして、立ち上がる。
万「愛聖、どこへ?」
『ちょっと、野暮用···かな』
出て行くなんて言ったら、万理は絶対止めに来る。
ニコリと笑いかけてベッドルームへと足を向けた。
小「ちょっと待ちなさい」
振り返りもせずに小鳥遊社長が言葉を放つ。
小「まだ僕からの話は終わってないよ。それとも八乙女は、そんな風に君を育てたのかな?」
八乙女社長の名前を出されて、一瞬身を固くする。
『あの···』
小「あぁ、勘違いしないでね、僕は怒ってる訳じゃないから。ただ、ちょっと考えがあるから···それを聞いて貰おうかと」
何を言われるんだろうとこっそり万理の顔を見れば、万理は何も言わずに小さく頷くばかりで。
『分かりました。大変失礼な事をして申し訳ありませんでした』
そう言って私はまた、小鳥遊社長と向かい合わせに腰を下ろした。
『それで、お話···というのは?』
小「その事だけど、まず一つ目は···君は八乙女に解雇された状態だよね?」
『まぁ···そういう事になります』
小「なら、契約解除を記した書類は持ってるかな?」
契約解除の···書類···
それはあの時、社長室に呼び出されサインをしたから写しは持ってる。
『それが何か···』
そう小さく言うと、差し支えなければちょっと見せて貰ってもいい?と言われ、特に意地になって隠す必要はないと思った私はカバンから取り出して小鳥遊社長の前に広げて置いた。
小「···うん、これなら特に大きな問題はなさそうだね。あとは僕次第ってところかなぁ···彼はなかなか熱いからね···う~ん···ま、何とかなるでしょう
」
書類を隅から隅まで目を通しながら、独り言を繰り返す小鳥遊社長は、書類に穴が開くのではないだろうかと言うくらい何度も読み返していた。
小「よし、決めた。佐伯 愛聖さん」
『は、はい!』
小「君、ウチの事務所に所属しない?」