第1章 輝きの外側へ
ー それなら尚更、同棲とかマズいんじゃ··· ー
万 ー あぁ、そうでもないよ?でも俺はタレントじゃないし、ただの事務員だから大丈夫だよ ー
ー だけど! ー
万 ー じゃあ同棲じゃなくて、同居って事でいいんじゃないかな? ー
万理と昨日話したばかりの会話が頭に浮かぶ。
昨日の今日で···なんて事になったんだろう。
って···う、ウソでしょ?!
万理が社長さんを部屋に招き入れた?!
ひとり慌てる私を万理がベッドルームへ押し入れドアを閉める。
万「愛聖、とりあえずその姿のままでいる訳に行かないだろ?こっちはどうとでもなるから、身支度したら出ておいで?」
『万理、あの···』
万「大丈夫だから。俺達は別に人に後ろ指さされるような事は何もないし、やましい事もない···あぁ、まぁ同じベッドでは過ごしたけど、何もなかっただろ?」
『そうだけど···でも、社長さんでしょ?』
この事で万理が···それこそクビになるようなことになったら私はどうしたらいいんだろう。
不安に駆られ万理のシャツをキュッと掴むと、私の手を包むように万理が手を重ねた。
万「心配しなくて大丈夫だよ、愛聖。さ、ほら早く着替えた着替えた」
『分かった···でもその前に私の荷物、あっちにあるんだけど?』
万「マジか···じゃあ俺が取ってくるから待ってて」
出来る限り大きくドアを開かないように万理が出て行くと、すぐにまたドアが開かれて隙間から荷物を渡された。
万「それじゃ、着替えが終わったら出ておいで?」
ひと言だけ残し、万理は静かにドアを閉めた。
手早く着替えを済ませ、失礼のない程度に身支度をする。
でも···顔くらい洗いたいんだけど。
それにスッピンは···ちょっと、どうなんだろう。
非常事態とはいえ、私だって一応元タレントだし。
寝起きで顔も洗ってない状態で、芸能事務所の社長さんの前には出られない。
勘のいい人だったら、多分···私が佐伯 愛聖だという事に気付いているかも知れないし。
散々に迷った挙句ドアを少しだけ開けて万理を見ると、万理もそれに気付いてくれて何とか事なきを得た。
『あの···すみません、お待たせ致しました』
万理に付き添われ、小鳥遊プロダクションの社長さんの前に座る。
緊張、する···