第6章 BLESSED RAIN
❁❁❁ 壮五side ❁❁❁
「三月さんなら、いま大和さんと一緒に買い物に行ってるよ?」
『そうですか···ひと足遅かったかな』
「急ぎの用事だったら電話してみればよかったんじゃない?」
あからさまに落胆する姿を見て、そう伝えてみると···
『あっ!最初にそうすればよかった!』
なんて言いながら、スマホを取り出して電話をかけ始めた。
そんな姿を見て、僕が目の前にいて話づらい内容だったら悪いからとキッチンの中に移動してお茶の用意をする事にした。
愛聖さんは確か、今日は社長と例のCM撮影の打ち合わせって言ってたから、その帰りかな?
だったらきっと疲れてるだろうし、ハーブティーでも入れてあげよう。
『急にすみません···なので、今日の夕飯は私の分は人数から抜いて下さい。はい、あ、夜食とかも大丈夫です···じゃあ···はい、三月さんも』
通話を終えて小さく息を吐いた愛聖さんが振り返り、僕を見て肩を竦める。
「夕飯いらないって言ってたけど、これからまた仕事?」
ごめん、聞こえちゃってと付け足して聞けば愛聖さんは、聞かれて困る内容でもないから大丈夫と笑った。
『ついでに言えば仕事でもないよ?ただ、急に食事に誘われて···私、三月さんの作ってくれるご飯好きなんだけどな···』
「それでも仕事関係のスタッフから声をかけて貰えるなんて凄い事なんじゃ?」
『仕事関係って言っても、楽だよ?』
···楽?
楽って···僕の知ってる楽さんって名前の人は、1人しか浮かばないけど···
「楽って、もしかして···だけど、TRIGGERの···八乙女楽さん、かな?」
『やだなぁ、逢坂さんってば。楽っていったら1人しかいないって』
クスクスと笑うけど、僕は驚きすぎて笑えないよ!
あ、でも?
前にいた事務所がTRIGGERと同じだし、一緒に仕事もしてたんだから仲がいいのは当然と言えばそうかも知れないけど。
「あ···じゃあ前にも夕飯いらないって言って出掛けたのは八乙女さんとの食事があったから?」
あの時は、泊まりがけ···だったけど。
『え?あぁ、あれは違います。あの時は楽じゃなくて、千』
「そ、そうな···え?!それってRe:valeの?!」
そっか···と流せるような名前じゃない事に更に驚いてしまった。