第6章 BLESSED RAIN
それとも、急に誘いをかけた俺になんて断ろうかと考えてるのか?
沈黙が···長い。
ー 楽?···もしかして、だけど··· ー
やっと言葉を出したと思えば、躊躇いがちな愛聖の声。
ー 夕飯のメニューで困ってるなら、私···あんまり役に立てないかも··· ー
···。
「はぁっ?!」
こいつ···どこをどう勘違いしたらそう言う結論になるんだよ?!
ー あ、だから、ほら!私って料理とか全然ダメだし!寮でもお皿洗いとか、なんかそういうのしかさせて貰った事ないし!···だから、作り方とかそういうのは···そうだ!今からダッシュで寮に戻るから、お料理上手な人に電話代わって貰うね! ー
「はぁっ?!」
ー 1回切るけどまたかけるから待ってて? ー
「ちょっ、待て!切るな!早まるな!!俺はメニューや作り方をお前に相談する為に電話したんじゃねぇよ!」
ー え?そうなの??···じゃあ、用事って? ー
こいつ···マジでその超絶天然な所を矯正してぇ。
「ハァ···だから、俺が言いたいのはだな···飯、一緒にどうかって事だ」
ここまで言わないと伝わらないとか、いったいどんな思考回路してんだよ。
ー えっ···と···? ー
···伝わってないのかよ。
「あぁ、分かった。ハッキリ誘う···俺と今夜の飯を食え。これなら通じるだろ」
俺らしくもない、ただ単語を並べただけの誘い文句。
なんの色気もへったくれもない。
ー 楽と···私が?なんで? ー
「···なんでもだ」
そしていまひとつ分かってない愛聖。
ー 楽、もしかして···ぼっち? ー
「もう···何とでも言ってくれ···」
ー じゃあ、分かった。とりあえず社長に許可を貰うから待ってて?ちょうどまだ社長室の近くにいるから聞いてくる ー
「分かっ···いや、待て。俺が直接話すから電話だけ取り次いでくれ」
愛聖が何を言い出すか分からないから、それなら俺が直接···向こうの社長と話す方がマシだ。
ー 楽が?まぁ、いいけど···じゃあこのままで待ってて? ー
そう言った通話の向こうで、控えめなノックの後に愛聖との話し声が聞こえて。
やがて俺へと電話が取り継がれた。