第6章 BLESSED RAIN
❁❁❁ 楽side ❁❁❁
また出ない、か。
さっきの打ち合わせの時、先に声掛けときゃ良かったか?
いや、それだと···周りに人が多過ぎだ。
制作スタッフや企業役員達に囲まれてたからな、愛聖。
それも仕方がないって言えば、そうなんだろうけど。
俺達TRIGGERに群がるってんなら、まぁいつもの事だが···愛聖は違う。
突然の移籍発表に、新作ランジェリーのCMモデルに起用···となれば話題性もある。
今のうちにコネを作っておきたいヤツらが群がるのは当然だ。
TRIGGERもそうなんだろうが、なんせうちは姉鷺が目をギラギラと光らせてるから、余程の根性座ってるヤツじゃないと姉鷺を口説き落とすなんて事は出来ないだろ。
チッ···帰るか···
何度掛けても繋がらない電話。
リターンさえ来ない電話。
暗くなったままの画面を見て、ジャケットの内ポケットに放り込んだ。
せっかく、明日の朝まで時間が空いたってのに。
誘いたかった相手は···またも音信不通かよ。
しょうがねぇ、龍を誘って飯でも···ん?
事務所に戻りかけた時、内ポケットの中身がブルブルと暴れ出す。
着信を告げる画面を見て、思わず顔を緩ませながら通話ボタンに触れた。
「···遅せぇよ。俺をどれだけ待たせんだ」
ー 社長と打ち合わせしてて出れなかったの!って言うか、ストーカー並の着信残すのやめてよ、楽。1回着信残ってたらリターンするんだから ー
「誰がストーカーだっての。それに、今まではどんだけ着信残してもリターンしなかったヤツが言うセリフじゃねぇよな?」
ー それは···ごめん···でも、まるで千かと思うような着信の回数だったから ー
千さん?···あの人はどれだけ普段から電話掛けてんだ?
ま、それも···愛聖が姿を眩ませたからってのがあるんだろうが···
「まぁ、いい。お前から電話掛けてきただけでも褒めてやる」
ー じゃあ、用件はそれだったの? ー
「アホか!···飯」
ー ご飯?楽、これからご飯なの?随分と早い夕飯みたいだけど、食事中なら切るね? ー
「待て切るな!その、アレだ···飯、どうかと思って」
通話の向こうで何かを考える様子を醸し出す愛聖がいる。
もしかして、まだ仕事があるのか?