第6章 BLESSED RAIN
だって、ヒロインの父親と歳が同じような男性を好きになるとか、そんな経験もなかったし。
そもそも恋愛なんてしたことなかったから···のめり込むほど好きになるっていう気持ちがよく分からなくて私に表現出来るんだろうかとか···随分と悩んだ。
小「あのドラマの内容はね、ある意味、僕たちみたいなオジサンからしたら夢のようなストーリーなんだよ。あ、でもストーカー行為はちょっと困るけど」
ストーカーは私もイヤですよと笑って返せば、社長はにこにことしながら話を続けた。
小「だってそうでしょ?こんなオジサンが自分よりひと回りもふた周りも歳が離れた女の子から恋愛対象にされるんだよ?世の中のオジサン達はキミの可愛らしい愛情表現に癒されたと思うよ~?」
『社長···もう、ホント···やめてください』
べた褒めする社長に恥ずかしくなり、体ごと斜めに向けて顔を隠した。
小「ほら、それそれ!そういう感じとか···万理くんが構いたくなるのも仕方ないなぁ」
え、万理?
『どうしてそこで万理が?』
小「いや、特に深い意味はないよ?ただ、ここの事務所では彼が1番イケメンだと言われているからねぇ···僕の次に」
······。
小「そこ、笑うところだけど?」
『えっと···あ、はは』
小「遅いよ···」
『······』
小「······」
数秒の間を開けて、ほぼ同時に吹き出して、社長室の中に2人の笑い声が響く。
社長はいつもこうやって、本気なのか冗談なのか分からない会話を振って来ては笑わせてくれる。
小「大丈夫、僕は万理くんには敵わないって事はちゃんと分かってるから」
ひとしきり笑った後、社長が今のは冗談だからと微笑む。
小「でも、僕が万理くんと同年代だったら負けてないと思うんだけどね」
クスクスと笑いながら社長が、あと10歳若かったら勝負出来るのになぁ···なんて呟いた。
社長···10歳若くても万理よりまだ随分と年が上って事、もしかして気付かないふりしてる??
『私、社長は素敵だと思いますよ?』
小「え、ホント?!それってあのドラマの相手役くらい?!」
食いつくように言う社長に私はまた笑ってしまう。