第6章 BLESSED RAIN
『それでは次の打ち合わせの時はサイズ計測があるって事ですね?』
小「そうだね。だから、脱ぎ着しやすい服装の方が楽かも知れないとは聞いたよ」
脱ぎ着···さすがに普段の寮にいる時みたいな格好では行けないから、八乙女社長から頂いた中から探してみよう。
小「と、まぁこんな所かな?今日の打ち合わせも長引いちゃったし、疲れてるだろうから寮に戻ってゆっくりして?」
『ありがとうございます。あ、そうだ!さっき七瀬さんから聞いたんですけど、あの会場でライヴするんですね』
嬉しさと楽しみなのが顔に出てしまいながら社長に言えば、社長は情報早いなぁ···って笑った。
小「パッと宣伝してデビューされるのは簡単だけど、それだと息が持たない。だからこそ、地道に少しずつ周りに名前を知って貰って、あの子達のデビューを待ち望んでくれる人がたくさん増えたら、晴れてデビューって感じだけど···それまではもう少し、時間が必要かなぁ」
『まぁ···普通はそういったレールを少しずつ進んで育つものですよね···』
私の場合は、違ったから。
小「八乙女はそうじゃなかった?」
『あ···はい、まぁ』
ここでの彼らと社長を見ていると、ほんとにアットホームな雰囲気というか、いい意味での···お父さんと子供たちというか。
子供たちが自分達の力で一生懸命に努力するのを側で見守っているのがお父さんである社長で。
いざ立ち止まりそうになったら、そこで初めて手を差し伸べる···的な?
八乙女社長の場合は、ビジネス色が色濃かったから···
とは言え、そればかりではなかったけれど。
世の中には優しい父親もいれば、子供には厳しく!という父親もいるわけで···
『社長は、私の···初めて出演したドラマはご存知ですか?』
小「もちろん知ってるよ?八乙女が直々に売り出し始めたお嬢さんが、いきなりドーン!と主演になったドラマでしょ?毎週欠かさず、ストーリーの続きが気になって見てたもん」
もん···って。
小「あれは親子ほど歳の差のある男性との恋愛から始まって、本人同士は好きあっているのに周りがヤイヤイ言って歯車が少しずつ噛み合わなくなった結果、キミの演じる女の子がストーカーへと変貌していくっていう内容だったよね」
『あの、社長?恥ずかしいからあんまりその辺は思い出さなくてもいいです···』