第5章 ヒカリの中へ
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
「ハ···クシュン!」
一「大神さん、まさか風邪ですか?」
「いや、それはないかな?俺が風邪引いたりしてみんなに伝染したら大変だし、それなりに健康管理には気を付けてるから」
それにしても···なんだったんだ今のは。
急に、なんの前触れもなく鼻がツーンと痛くなって、それがくしゃみへと導いたような。
三「くしゃみ1回ってことは、今頃どこかで誰かにウワサされてるとかじゃねぇの?」
「ウワサ···ねぇ」
もしかして千や百くんが俺の悪口でも言ってるかな?
いや、百くんは絶対にないな。
きっと、千が俺の愚痴とかを百くんに話してるんだろ。
「さて、これでよし!」
丁寧に焼き上げておいたシフォンケーキを切り分け、たっぷりのクリームを添えてカラフルチョコスプレーを振りかけた。
愛聖のお母さんが、いつも誕生日とか記念日に作ってたやつ。
俺も、それから千が俺の家に出入りするようになってからも、何度かご馳走になったシフォンケーキ。
母子2人じゃ食べきれないから、とか言っていつもお茶にご飯にと声を掛けてくれたっけ。
俺もバイトがない時に料理やケーキの作り方教わったりしてたけど、それがこんな時に役に立つとか···世の中分からないもんだな。
テーブルに運び、みんなに配り終えると愛聖の目を隠しているナギくんに目で合図を送った。
ナ「マリー?もう目を開けてクダサイ···」
···っていうか、ナギくん。
顔、近過ぎるから。
『これって···これも万理が?』
目を開けた先に置いてあるケーキを見てから、愛聖が俺を見る。
「美味しく出来てるかは保証出来ないけど、再出発の記念にね」
陸「再出発の記念なのに、このケーキでいいの?」
まぁ、普通はそう思っちゃうよね。
でも、これでいいんだ。
一「デリカシーのない人ですね、七瀬さんは。これは佐伯さんと、佐伯さんのお母さんとの思い出の詰まった物だそうですよ」
陸「知らなかったんだから仕方ないだろ!一織はいっつもオレばっかり意地悪対応だよな」
三「···だからか。ケーキ作りならオレはある意味本職だけど、万理さんがひとりで作れるからって言うから何かと思ってたんだよな」