第5章 ヒカリの中へ
三月くんに作って貰った方が見栄えも出来栄えも、きっと俺より上手く作ってくれるとは思う。
けど、今回のは俺ひとりでどうしても作ってあげたかったから。
「愛聖、せっかくだから食べてみてよ?それとも、もうお腹いっぱいで入らないかな?」
環「腹一杯になってても、ケーキは別腹だろ?」
大「タマは食いすぎだろっての」
ケーキを見つめ続ける愛聖が、周りの話で笑顔を見せた。
『私も、別腹あるかも···いただきます』
微かに手を震えさせながら愛聖がケーキをひとくち、口に入れる。
『美味しい···ほんとに、母さんと同じで、』
ナ「Oh···マリー、ナゼ泣きますか?」
『ごめんなさい···ちょっと、凄く嬉しくて』
ナ「non···謝らなくてイイデスヨ?美しい女性は、涙も美し、」
三「いちいち口説くなっつーの!!」
ナ「Ouch!ミツキ、それ痛いデス」
三月くんがナギくんにデコピンをして間に入り、それがまた日常のやり取りである事に愛聖が笑い出した。
「喜ばせようと思ったんだけど、逆だったかな?」
スっと愛聖の目元を払って顔を覗けば、そんな事ないと小さく首を振った。
「母さんと同じ味のご飯だけでも泣きそうなの我慢してたのに、この懐かしのケーキで涙腺開放しちゃった···ありがとう、万理」
「おっと···アハハ···愛聖の甘えん坊は昔も今も変わらないな」
不意に抱き着かれて、ちょっと照れたのを隠すためにそんな事を言って頭を撫でてみる。
大「ちょっと和泉の奥さん、聞きました?昔からラブラブなんですわね~」
三「若いっていいわねぇ···ウフフ···じゃねぇよ!オレを巻き込むな!」
一「今の兄さん、可愛かったですよ?」
三「うるせぇ、可愛いとか言うな!」
これが彼らの日常で。
そこに俺も愛聖も増えて。
彼らののデビューはまだ先だけど、それでもみんな一生懸命で。
「俺も、今よりもっと頑張らないと···」
『なに?』
「なんでもないよ」
いまは、みんなよりひと足早く歩き出した愛聖を···支えてあげないとな。
そんな思いを込めて、その小さな肩をそっと抱き寄せた。