第5章 ヒカリの中へ
『母さんの···』
懐かしい味に、視界が滲んで行く。
大「どうした愛聖。万理さんの飯は泣くほど美味いってヤツか?」
二階堂さんの言葉に箸を持ったまま、思いっきりのVサインを向けた。
『最高です!』
一「行儀が悪いですよ、佐伯さん」
『はい、すみません···』
まさか万理が、母さんと同じ味の料理を用意してくれてるとは思わなかった。
母さんは卵焼き以外にも、万理に料理を教えてたんだなぁ。
ナ「マリー?そんなにタマゴを見つめてドウシマシタ?」
『見つめてるわけじゃ···でも、卵焼きもきっと美味しいだろうなって』
卵焼きに関しては、食べなくても味の想像はつくんだけど。
万理が作ったのなら···それはきっと、甘い。
ナ「ドウゾ?···はい、あ~んしてクダサイ」
『···え?』
ナ「さぁ、マリー?ドウゾ、エンリョなさらず?」
いや、どうぞって言われましても。
小「愛聖さんは今日、イケメンにあ~んして貰う日なのかな?···ね?」
ナギさんに差し出される卵焼きをどうしようか考えていると、社長が笑い出す。
陸「イケメンに···って、なにがですか?」
小「いやぁ、実は会見が終わった後の控え室にTRIGGERの3人が来てね···僕はいろんな所からの電話対応に追われていたから部屋を出たり入ったりしてたんだけど···」
あれ···なんかこの話の流れって、もしかして?
小「何度目かの電話が終わった後に部屋に入ろうとしたら、八乙女楽くんが愛聖さんにケーキを食べさせていて···そうそう、ちょうど今のナギくんのように」
「「 えっ?! 」」
『社長それ言っちゃダメなやつです!』
慌てて止めようとしても、社長はいいじゃない凄い事なんだからと笑いながら話を続けてしまう。
小「最初は抵抗あったみたいだけど、彼がいま食べないから口移しするぞ!とか言って···聞いてるこっちが照れちゃったよ」
「「 ケーキを口移し?! 」」
『だから社長!っていうか見てたんなら楽の暴走を止めて欲しかったですよ!!』
大「さすが抱かれたい男No.1ともなれば、ケーキまで口移しするのか?そんな事されてたとか、スゲーな」
『されてませんからっ!』
ニヤニヤしながら私を見る二階堂さんに、絶対されてないと念を押す。