第1章 輝きの外側へ
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
毎日同じ時間にセットしたアラームで目が覚める。
特別な仕事でない限りは、遅い出勤でも同じ時間に起きる事にしてるから。
それにしても···腕が痺れてる···
愛聖が昨夜、とっておきのがあるから枕いらないって言ったのは俺が腕枕するって事だったのか。
いい大人だぞ、俺達は。
まぁ···愛聖だし、とか思った俺も俺だけどね。
すぅすぅと寝息を立てる愛聖を起こさないように、そっと腕を引き抜く。
『ん···万理···卵焼き···』
おっと···起きちゃったかな?
目が覚めたなら覚めたで朝ご飯を、とか思ったけど。
近場にある枕を抱き込んでまた寝息を立て始めた。
数日間とはいえ、女の子がする生活じゃない様な日々を過ごして来たみたいだから、人肌のある暖かい空間が心地いいんだろう。
でも。
···なんか、ヤバイなこの図。
シワのよったシーツに、無造作に包まる毛布に。
俺のシャツからすらりと伸びる手足。
肌蹴かけた襟元の白い肌···
参ったな···愛聖は全然気にもしてないけど、俺だって一応···健全な大人の男だぞ?
無防備すぎるだろ、おい。
ダメだ。
良からぬ事を考える前にシャワーでも浴びてスッキリして来よう。
うん、それがいい。
そのあとにゆっくり朝ご飯の用意をしてから愛聖を起こせばいい。
そっとベッドから出て、小さく丸まっている愛聖に布団を掛け直す。
慌てて新しい生活の場を探さなくてもいいよ、愛聖。
まずはその傷付いた心を落ち着かせてから、これからの事を一緒に考えよう?
それまでは好きなだけ、ここにいればいい。
俺だって、ケガをした時は···この世の終わりかと思うくらい悩んだし。
愛聖も、そうだったんだろ?
まだ目が覚めそうにもない愛聖の頭をそっと撫でてやる。
···それにしても、寝言で俺の名前と卵焼きって。
なんて色気のない寝言なんだ?
込み上げてくる笑いで震える肩を鎮めながら、静かにドアを開け部屋から出る。
卵焼き、ね。
「今朝は和食にするかな?」
キッチンの炊飯器に目をやりながらポツリと呟き、シャワールームへと足を運んだ。