第5章 ヒカリの中へ
『社長?』
こぼれ落ちてしまう前に涙を指先で払い、社長の顔を見る。
小「キミはひとりじゃない。ほら見てご覧?」
寮がある方向を見る社長を見て、私も同じ方向に顔を向ける。
環「あっ!バンちゃん、マリーがいる!おーい!マリー!」
万「環くん、そんなに叫ばなくても大丈夫だから···」
四葉さんと、万理···?
万「社長、お帰りなさい。お疲れさまです」
小「ただいま。今日はいろいろな事があった1日だったよ」
『すみません···私がいろいろとご迷惑をお掛けしたので』
今日の出来事を振り返り、確かにいろいろあったな···と考える。
環「マリー、疲れて倒れたんだろ?お疲れさま···はい、ギューっ!」
『四葉さん?!』
なんの前触れもなくギューっとされて、どうしたらいいのか分からず社長の顔を見ても、にこにことしてるばかりで。
環「マリー、元気出た?」
『え?元気?!』
あ、このギューってのは、四葉さんなりの元気を分けてくれてるってこと···なのかな?
環「だーかーら、元気出た?」
身長差のせいで、自然と耳元で話す四葉さんの声が擽ったくて肩を竦める。
『元気出ましたよ?四葉さん、ありがとうございます』
環「ん。じゃあ次はバンちゃんの番な」
万「え、俺も?」
環「だって、俺だけハグしたらズルいって言われるから···ナギっちに」
あ···そういう事ですか。
環「でも、ボスだとなんかアレだから、バンちゃんで」
小「環くん、アレって···なに?」
アハハ···私なんとなく察したかも。
環「ボスだと···年離れすぎてて、なんかエロい。バンちゃんはギリセーフ」
やっぱり···
小「みんな万理くんばっかり···万理くん、僕と言う者がありながらキミは···」
万「社長···俺には社長だけですよ?」
Re:valeかっ!と危うくツッコミそうになったのを堪えて社長の前に立つ。
『社長、毎日ありがとうございます』
小「愛聖さん?!」
さっきの四葉さんをマネて、黙ってハグをしてみる。
社長は少し狼狽えてはいたけど、すぐに私の背中をぽんぽんっとした。
小「ありがとう、愛聖さん。そして、明日からもよろしくね?」
『はい!』
環「わー···マネージャーに言ってやろ」