第5章 ヒカリの中へ
こんなに熱があったから、最近見かけなかったんだ···
お兄さん、ひとりで住んでるのに熱出してるとか寂しくなかったのかな。
自分がそうなった時、ひとりで家にいるのが寂しかったせいもあって、せめてお兄さんの目が覚めるまでは一緒にいてあげようとベッドの脇に座った。
起きた時に誰もいなかったら、きっと寂しいから。
そうだ!
私が熱出てる時って、母さんがずっと手を繋いでくれてた。
そしたら安心して寝れて、早く治った気がする。
···お兄さんにも、それやってあげたら早く治るかな?
チラリと布団から出てるお兄さんの手を見て、おずおずと触れてみる。
お兄さんの手···熱いなぁ。
でも、こうしてればきっと早く治るからね?
だから···お兄さんが寂しくないように、私がずっと···手を繋いでてあげる。
触れていただけの手を、そっと握りながら···まだ目が覚めないお兄さんの側から離れなかった。
繋いだ手から伝わる熱で、自分もなんとなく安心してしまったのか···小さなあくびが止まらなくなる。
ちょっとだけ···ちょっとだけなら、いいかな?
そう思って、そのまま自分も目を閉じた。
万「えっと···これは···?」
どれくらい時間が経ったのか分からないけど、お兄さんの声がしてハッと顔を上げる。
私、寝ちゃってたんだ···
万「えっと、愛聖ちゃん···どうしてここに?」
『母さんが、お兄さんにご飯持って行きなさいって···あっ!ご飯置きっぱなしだ!』
大事な事を思い出して立ち上がろうとすれば、繋いだままの手に気がついて···急に恥ずかしくなる。
『ち、違うからね!これは私が熱出た時に母さんかこうやってくれたら早く治ったからで!だから、えっと···お兄さんが寂しかったらかわいそうとかじゃないからね!』
万「リアルな···ツンデレ?」
『それってなに?』
万「なんでもないよ···そっか、手を繋いでもらうと早く治るのか···なるほど···だからか」
『···治った?』
クスクスと笑うお兄さんを見れば、お兄さんは治ったかも?愛聖ちゃんの手は、魔法の手だねって言ってずっと笑ってた。
『なんで笑ってるの?私なんか変だった?』
いつまでも笑うお兄さんにムッとしながら、手を離して立ち上がる。
『ご飯、持ってくるから』