第5章 ヒカリの中へ
小「違うの?例えば万理くんが僕なら、お母さん帰って来るまで僕の家で待つ?おやつくらいあるよ?とか誘っちゃうけど」
『社長、それだと万理より社長の方が危険人物ですよ?』
小「えぇっ?!それはやだなぁ。あ、それで万理くんはなんて言ったの?もしかして、キミを置いたまま帰った、とか?」
『それも違います。万理は、そうじゃなかったんです』
万「愛聖ちゃんのお母さんって、今日は何時くらいに帰って来るか分かる?」
なんでそんな事を聞くんだろうと思いながらも、ずっとにこにことしているお兄さんに、今日は6時まで仕事って言ってたと答えてしまう。
万「仕事が終わるまで、あと2時間か···仕事場から帰って来るまでの時間を考えたら、2時間半くらいかな?って言っても、それまで俺の家に来るのは抵抗あるだろ?」
お兄さんの家に?
それはダメ!いくらお隣さんでも、ダメ!
学校の先生が、大人の男の人に着いて行ったらダメって言ってたもん!
そんな事を考えながら、私はまた首を振った。
「よし、分かった。愛聖ちゃん、ちょっとだけ待ってて?すぐ戻るからさ」
お兄さんは自分の家にバタバタと入って行って、すぐにタオルや上着を何枚か抱えて戻って来た。
万「はい、これ使って?」
『タオル···何に使うの?』
差し出されたタオルを見て、それまで首だけを振って答えていたのが、思わず声を出してしまう。
万「女の子を地べたに座らせる訳には行かないからさ?だから、このタオルを敷いて上に座って?それからこれは、風邪引いたりしたら困るから羽織って?こっちの毛布はお腹冷えないように掛ける!これから大丈夫だろ?」
そう言って万理は私をありとあらゆるものでぐるぐる巻きにして、それが終わると私の隣に座った。
万「愛聖ちゃんのお母さんが帰るまで、俺も一緒に待っててあげるから。それなら寂しくないだろ?」
『お兄さんは?お兄さんは何も掛けないの?』
私だけを暖かくして自分はさっきと変わらない格好のままの万理に言えば。
万「俺は平気だから。愛聖ちゃんが風邪引いたりしたら、お母さんが心配するだろ?」
ね?と笑って、そのままずっと私の隣で母さんが帰るのを一緒に待っててくれて。
帰って来た母さんは、そんな私達を見てびっくりしてたけど。