第5章 ヒカリの中へ
電話を終えた社長が戻り、みんなを先に帰してから私達も事務所まで戻って来た。
寮へ戻る前に仕事の話をしようと言われ、社長室で向かい合って座る。
小「さっきチラッと話したけど、決まったよ。愛聖さんの最初の仕事」
『本当ですか?!こんなに早く仕事が決まるなんて···』
小「まぁ、黙ってるのも変だから話すけど···この仕事は、八乙女が持って来たんだよ」
八乙女社長が?
小「うちみたいな小さな事務所は、たいした仕事なんて取れないだろう、自分にもそっちにもメリットがある仕事があるから乗っかれ、とか」
『どうしてですか?だって八乙女プロダクションって、』
小「キミの為だと思うよ、愛聖さん?」
『私の···?』
にこにこしながら社長が言って、でもそれがどういう意味なのか分からず言葉を待った。
小「移籍発表はする。なのに、土台の方が不安定だったら八乙女の所からウチに移籍したのに愛聖さんに泥がつく···とか言ってたよ」
『泥って···別に私はゼロからやり直すつもりでしたから泥を被ろうが、塗れようが平気なのに』
しかも、さり気なく社長に失礼な言い方だし。
だけど···そんな物言いも、八乙女社長っぼいというか。
言われた本人も、なんかにこにこしちゃってるから気にしてない感じだからいいのかも知れないけど。
私からしたら、凄く···複雑。
『あ、それでお仕事っていうのはどんな内容なんですか?確か···脱ぐ、とか···』
控え室で楽達が来るまでの会話を思い出して、脱ぐ···って事は···なんてまたも考えてしまう。
けど、まさか八乙女社長がそんな仕事を振ってくる事はないだろうし。
小「もちろん脱ぐ前提だけど、でも成人男性向けの仕事じゃないから安心して?さすがに紡くんと同じ年頃のお嬢さんをそういった仕事に回したりしないから」
『じゃあ···脱ぐって言うのは?』
小「大手老舗ブランドの下着のCMだよ。なんでも社長が代替わりしたから、今までのデザインを一新して若い人向けにリニューアルデザインするから、とか」
『ちなみに、私以外のタレントさんはいるんですか?』
小「八乙女が持って来た話だから、もちろん···TRIGGERの3人だよ?3人別々のパターンで撮るから、お相手役って感じかな」
『私だけ、下着なんでしょうか?』