第5章 ヒカリの中へ
ぽんぽんっと頭に手を載せる龍を振り返っても、ね?と微笑まれるばかりで仕方なく、渋々···楽の隣に座ってみる。
楽「遅いんだよ、手が痺れるだろうが···ほら」
『え?あ···それはちょっと···』
スっと口元にフォークを出され、思わず身を引く。
楽「ちょっと···なんだ?」
ニヤリと笑いながら言葉を繰り返す楽が、ジワジワと間合いを詰めてくる。
楽···絶対分かってて言ってるよね。
楽「これで食べれないってんなら、口移すぞ?」
口移す···それはもっとムリ!!
『分かった!分かりました!···食べればいいんでしょ、食べれば!』
楽「最初から素直にそうしとけよ」
ほら、と再度勧められて···ぱくり、と食べた。
口の中にほわんと広がる甘い味が、さっきの苦々しいコーヒーの味を消していく。
『···美味しい』
楽「あ、ぁ···そうかよ···そりゃ良かったな」
フイッと顔を背ける楽に、なんか怒らせたかな?と思いながら天の顔を見れば。
天「照れるんなら最初からやらなきゃいいのに」
楽「照れてねぇよ!···ちょっと、アレだ。雛鳥にエサやってる気分なんだよ」
天「雛鳥?楽はいつから雛鳥なんて育ててたの?知らなかった」
楽「天、お前わざとだろ···」
天「さぁね」
『楽って、雛鳥飼い始めたんだ?仕事忙しそうなのに大変だね···あ、長期留守にする事があるなら預かってもいいよ?』
地方に行ったりして帰れないとかあったら、お世話出来ないだろうし。
数日なら私が面倒見れるんじゃないかと思うし。
その時は七瀬さんには近付けないようにしないと···かな?
一織さんが動物とかもダメだって言ってたから。
天『はぁ···こっちは天然』
『天然?なにが?』
天「別に」
龍「愛聖、楽の雛鳥は大丈夫だよ。ちゃんと自分で羽ばたき出したから」
クスクスと笑いながら龍が言って、そこまで大きくなった鳥なんだ?とちょっと安心する。
『そうなの?じゃあもうお留守番出来るんだね』
そこまで小さな雛鳥じゃないなら、私の出番はないか、と笑う。
天「最高級の天然」
『だからなにが?』
天「そして自覚なし」
天の言葉が引っ掛かるけど、まぁいいか?とカップのコーヒーに口を付けた。