第5章 ヒカリの中へ
❁❁❁ 楽side ❁❁❁
「遅い。愛聖のヤツ着替えにどれだけ時間かかってんだよ」
龍「まぁまぁ。ほら、女性は支度に時間がかかるって言うじゃないか。な?」
天「楽、イライラし過ぎ。ハゲるよ」
なっ···!!
天に反論しようと口を開きかけるが、イライラしてないとは言いきれずにやめる。
だいたい何だよ。
急に愛聖を抱えて行ったと思えば、なかなか出て来ねぇし。
出て来たら、出て来たで···アレはどういう事だよ。
天のシャツに···ルージュの跡。
どういう状態になればアレがその場所に付くかなんて、考えなくても分かる。
なに···してたんだ?
天のシャツを見れば見るほど、余計な妄想が広がって苛立たせる。
天「ねぇ、楽。さっきからボクの事ずっと見てるけど、なに?」
「別に···なんでもねぇよ」
天「そう?でも、ボクには楽が言いたいこと何となく分かるけど」
天が小さく笑いを浮かべながら、足を組み替える。
天「楽はさ、これが気になって仕方ないんじゃない?」
スっとシャツに付いたルージュの跡をなぞり、挑発的に俺を真っ直ぐ見る。
龍「これって?」
天「龍も気になる?じゃあ、教えてあげるよ···これはね、愛聖のルージュの跡だよ。さっき向こうの部屋で愛聖が···ボクに···」
そこまで言って天は言葉を切った。
「そこまで言っといてやめんなよ」
天「あとは本人に聞いたら?」
クスッと笑いながら天が俺の後ろに視線を流す。
何なんだよ···と振り返れば、着替え終えた愛聖がカーテンを開けながら戻って来た。
『すみません社長、お待たせしました』
小「気にしなくて大丈夫だよ。それに女性が身支度するのに時間が必要なのは分かってるから」
『でも、崩れてしまったメイクを直すだけなのに思ったより時間が掛かってしまって···』
崩してしまったメイク···
その言葉を聞いて、思わず天を見てしまう。
それでも天は、顔色ひとつ変えずにすましていて余計イライラさせる。
小「それも大丈夫。普段のナチュラルメイクの時もキレイだけど、今日のキミは一段とキレイだから」
『社長···そんなこと言われたら、本気で照れますよ?』
照れてんじゃねぇよ!
リップサービスだろ今のは!