第5章 ヒカリの中へ
絆創膏を貼り終えて、さてどうしようかと考える。
このままこんなヒール履かせても靴擦れを悪化させるだけだし。
と、なると···移動方法はひとつか。
『あっ、ちょっと天?!』
何も告げずに愛聖の体を抱き上げれば、驚いた愛聖が声を上げた。
「落とされたくなかったら大人しくして」
『でもちょっとこれ恥ずかし、』
「手、離すよ?」
『それだけはやめて?!』
一瞬フワリとさせると、愛聖はボクにしがみついて来た。
「最初からそうすればいいのに」
フン···と呆れながら歩きだせば、ふわふわにセットされた愛聖の髪がボクの頬を擽る。
「あの、すみません。カーテン開けて貰っても?」
小「お手数おかけします」
近くにいた移籍先の社長に言ってカーテンを捲ってもらい、奥にあるドレスルームへと入ると静かにカーテンが閉められた。
「着替えるんだからここでいい?」
『ありがとう、天』
開かれたままの最奥のドアの中に愛聖を降ろして、じゃ、早く着替えなよ?と声を掛け立ち去ろうとするとツン···とシャツを掴まれた。
『あの、迷惑ついでに···というか···』
「なに?」
『背中のファスナー···下ろして貰えるとありがたいんだけど』
···は?
さすがにボクはそこまで出来ないでしょ。
「着る時はどうやって?」
『姉鷺さんが···』
あぁ、そう言えばテレビの端っこに映ってたっけ。
「ホント、手間が掛かる···」
なんとなく面倒で、抱き合うような形で愛聖の背中に手を伸ばし、ファスナーを探し当てるとゆっくりと下ろす。
こんなの、楽か龍に頼めばいいのに。
龍はともかく、楽なら何の躊躇いもなく···
···?
スルスルと滑らかに下りていたファスナーが、前触れもなく止まってしまう。
横から覗くように手元を見てみれば、それは生地を少し挟みながら止まっていた。
「はぁ···まったく···」
ちょっと待ってと言って、挟まった生地を傷付けないように外そうとしても手元が見づらくて上手くいかない。
「愛聖、ちょっと後ろ向いて」
1度手を離し体の向きを変えようと肩に手を置いて愛聖を動かす。
『あ、痛っ···』
「なに?」
『天の···シャツのボタンに、髪が···』