第5章 ヒカリの中へ
❁❁❁ 天side ❁❁❁
「ところでさ。社長のでも楽のでも、どっちを先に食べてもボクには関係ないけど、とりあえず先に着替えくらいしたら?食べこぼしたりしたら、目立つんじゃない?そのドレス」
『食べこぼすとか、私そんなにお子様じゃないよ?』
「絶対そう言い切れるの?」
『着、着替えさせて頂きます···』
最初からそう言えばいいのにと思いながら、掛けられたタオルから床に伸びた足元を見れば、そこに靴はない。
まぁ、ソファーに寝かされてたんだから当然···靴は脱いでるか。
そのままチラリと見回せば、愛聖から見えにくい所にそれは揃えてあって、手に取り、足元に並べてあげる。
「ほら、早く履きなよ」
『あ、うん···ありがとう』
なかなか履こうとしない愛聖に疑問を抱きながら、その足元に膝を付き···早くしなよ、と言いかけて。
「ちょっと?靴擦れ出来てる」
赤く擦れた場所をよく見ようと足に手を伸ばせば、スっと隠されてしまう。
『だ、大丈夫だから』
「ダメ、見せて。愛聖の大丈夫は大丈夫じゃないから」
隠された足首を掴み目線の高さに上げれば、大した事はなさそうだけど痛々しく赤くなっている。
「絆創膏で応急処置だね···ちょっと待って」
足首を掴んだまま、片方の手で財布を広げて絆創膏を取り出し、口を使って開封する。
『あ、あの···天?』
「動かないで」
『そうじゃなくて、裾が···み、見えちゃ、う···』
···は?
裾?
言われて初めて現状を見れば、ボクが足首を掴みあげてるせいで裾が持ち上がり、それを必死に両手で押さえる愛聖がいた。
「なに慌ててるの?···大丈夫、気にしなくていい。別に愛聖のが見えたからって、ボクがこの場で欲情するわけないでしょ?···楽じゃないんだから」
楽「おい、なんでそこで俺の名前が出るんだよ。俺だって愛聖には欲情しないっての!」
『ねぇ?そろそろ私に失礼だって事に気が付いてくれないかな?』
微妙な顔した愛聖がボク達を交互に見ながら言うけど···
「じゃあ聞くけど、楽が欲情するほど魅力···あるの?」
楽「だからなんで俺なんだよ!」
『ないかもです』
「かも?」
『···ないです』
「ちゃんと分かってんならいい」