第5章 ヒカリの中へ
楽「横?···なんだ?」
天「だから、ほらコレ。楽が買って来たのと同じ物がもうひとつある」
さり気なく体を寄せて隠そうとしてたのに、八乙女社長に貰った物を天が素早く持ち上げてしまった。
···終わった。
龍「それって、中身も同じってこと?」
龍···今それ私に聞かないで。
そして天は箱を開けないで~!!
天「同じだね」
···終わった。
楽「くそ···この俺が親父と同じ思考だと思うと···」
天「遺伝子レベルじゃない?親子なんだし」
楽「言うな!」
龍「まぁいいんじゃない?愛聖も喜んでるんだし」
まぁ、はい。
このケーキ、ホントに美味しくて好きだから。
楽「いや、俺が買って来た方が美味いに決まってる···愛聖、今すぐ先に食え」
『はい?』
楽「だから、こっちを先に食え」
『だから、なんで?』
どっちを先に食べても同じ味なのに?
龍「ハハッ···そういう事か楽!」
どういう事?と目だけで龍を見ると、龍は笑いながらも私にこっそりと教えてくれる。
龍「楽はさ、きっと社長にヤキモチ妬いてんだよ。自分より先に愛聖にこれを買ってきたから」
そうなの?とまた目だけで返せば、龍はニコリと笑って小さく頷いた。
天「楽も大概、カワイイとこあるんじゃない?」
楽「どういう意味だよ」
天「そのまんまだけど?」
楽「口の減らねぇヤツ」
天「お互い様でしょ」
龍「だからすぐケンカするなって」
「「 してない! 」」
『プッ···』
目の前で繰り広げられる懐かしい光景に笑いだしてしまう。
この3人はいつもこんな感じだったっけ···
龍「さっきまで何か思い詰まってた顔してたけど、やっと笑ったね」
『龍···だって、楽と天が···』
天「ボクじゃない」
楽「俺のせいにするな」
『···ほらね?』
龍「だな」
龍と肩を竦めてこっそり笑い合う。
そんな私達を、社長はずっと見守っていた。