第1章 輝きの外側へ
❁❁❁ 壮五side ❁❁❁
はぁ···さっきの事が気になって眠れない。
三月さんと買い出しに出た時に見かけた、あの人。
チラッとしか見えなかったけど、でも。
確かにどこかで見た覚えがあるんだけど。
う~ん···やっぱりダメだ。
思い出そうとすればするほど、分からない。
ゴロンと寝返りをうって、枕元に置いているスマホに
表示された数字を見てため息を吐き、ベッドから起き上がった。
このまま寝付けないのも明日のレッスンに差し支えてしまう。
日頃から環くんに夜更かしはダメだと言っているのだから、僕が眠そうにしている訳にはいかないな。
物音を立てないように、そっと自室を出る。
温かい物でも飲めば、今度は眠れるだろうから。
そう思ってリビングへと向かえば、そのドアからは明かりが漏れていた。
また環くんが消し忘れたのかな?
そんな事を考えながらドアを開けると、そこには。
「え?三月さん??」
キッチンカウンターの向こうで冷蔵庫を開ける三月さんの姿があった。
三「ん?あぁ···なんだ、壮五もか?」
その言葉を汲んで、三月さんも寝付けずにいたんだろうと先の言葉を繋いだ。
「僕もか?って事は、三月さんも寝付けなかったんですね?」
三「そういう事。なぁんか今日見た事が気にっちゃってさ。ほら、万理さんの」
「···そうですね。僕もあれからずっと考えていたら、こんな時間まで寝付けなくなってしまって。それでなにか飲もうかなって」
オレもオレも!と笑いながら、三月さんが冷蔵庫から牛乳を取り出した。
三「んじゃ、オレ特製のホットミルクでいいか?ハチミツ入りのやつな」
「ありがとうございます、僕も手伝います」
三「いいからそこ座ってろ?オレ特製のホットミルクはきっと背が伸びるぞ?一織で実証済みだからな」
「一織くん?それは···三月さんには効果がなかった、と言うことですか?」
言ってしまってからハッとして、失言を···と謝った。
三「壮五。お前って時々、超絶辛口コメントするよな」
「すみません、僕···」
三「ま、別にいいケドな。同じ物を飲み続けて一織しか背が伸びなかったのは事実だし。くそぅ!なんでだ?!」
それはもう、遺伝子レベルの問題なんじゃないかと思ったけど、さっきの失言のこともあって僕は黙っている事にした。