第5章 ヒカリの中へ
「···あぁ、分かった。は?まだ親父がそこにいるのか?···まぁいい···じゃ、とにかくそっちに行くから」
···ったく、どうなってんだよ。
会見が終わってから疲れて気が抜けた?
心配いらない?
大丈夫だ?
全然大丈夫じゃねぇだろうが。
天「随分と乱暴な会話だったけど?」
通話が終わるのを待ったいたかのように天が声をかけてくる。
「アイツ、会見が終わってから倒れたらしい」
天「へぇ···それは楽しみが増えた」
「お前、そういうキャラだったか?」
薄く笑いを浮かべる天を見て言えば、天は別に···と更に微笑んだ。
天「だって楽しみが増えたじゃない···愛聖に説教するポイントが増えたって事。雲隠れしてた間に随分と健康管理に怠けがあったって事でしょ?」
さらりと言う天は、行くなら早く支度しなよ?と壁に寄りかかってドアを見つめる。
コイツの説教···この感じ···2時間コースの態度だ···
「一応、確認しとくけど。天、お前まさか愛聖に床に正座しろ!とか、言わないよな?」
行ってみなきゃ状態が分からないけど、相手は一応···倒れた人間だぞ?
天「ボクをなんだと思ってるの?鬼?悪魔?それともロボット?···楽、3秒以内に答えて」
マジかよ。
オレに火の粉が降り掛かって来やがった。
天「···3」
カウント開始?!
天「···2」
「今はそんな事してる場合じゃないだろ」
天「···1」
カウント止まんないのかよ!
「ぜ、全部だ全部!」
鬼も悪魔もロボットもな!
天「そう。楽の気持ちはよく分かった···特別に、愛聖の隣に仲良く正座出来る権利をあげる」
「なんでそうなるんだよ!」
龍「ただいま···って、またケンカ?」
「「 違う 」」
龍「タイミングぴったりとか、仲良いなぁ」
「「 それも違う 」」
ツッコミどころ満載の龍の言葉に軽く舌打ちをしながら車の鍵を掴む。
「行くぞ···向こうにはまだ親父がいるらしいけど、気にすんな」
龍「社長が?なんで?」
天「愛聖が倒れたんだってさ」
龍「えっ?!なんで?」
「行きながら話す」
慌ただしくドアを開けて通路に出る。
駐車場までの道のりが、心做しか遠く感じて···足が早く進んでいた。