第5章 ヒカリの中へ
「だってそうだろ?あんなに大勢のメディアの前で、毅然とした姿勢であんな風に言えるんだからさ?」
楽「フン···曲がりなりにも社長だから、だろうよ。ハッタリのひとつやふたつくらい堂々と言うだろ」
天「楽もオトナになったら社長みたいになるって事だね」
楽「俺はとっくにオトナだっての!それに、アイツみたいにならなくてもカッコイイんだよ」
あぁ、また始まった···2人ともすぐそうやって···
天「前に言ってたじゃない?コホン···俺は俺以外を生きたことがない、大真面目に八乙女楽をやってんだよ···とか。それと似たようなものでしょ?」
楽「おい、天···いまのって俺のマネか?」
天「他に誰だと思うの?」
「あぁ、ほら!そうやってじゃれてないで会見見るんだろ?」
「「 じゃれてない! 」」
···じゃれてるよ。
「とにかく、会見の中継見るん、」
ー 最近メディアで見かけませんでしたが、今回の急な移籍発表と何か関係があるんですか? ー
テレビから聞こえたメディアの質問が聞こえて、言葉を途切れさせた。
愛聖は、なんて答えるんだろうか。
せっかく再活動の方向で話をしていたのに、まさか本当の事情なんて話したりしないよな?
ー それは···皆さんもご存知だと思いますが、私は仕事をしている時に入院中の母を亡くしました。それから色々と考えるようになって···自分を見つめ直す時間が必要だったからです··· ー
愛聖の母親が危篤だって連絡が入った時、愛聖はどうしてもその場を離れられない状況にあって。
やっと病院へ着いた直後に、息を引き取ってしまったと聞いた。
あの頃の愛聖は、ずっと自分を責めて泣いてばかりいたよな。
ー そうでしたか···極秘入籍や極秘出産をしたのではないかという噂があるのはご存知ですか? ー
···極秘入籍?
···出産?
······。
·········。
「「 はぁっ?!相手は誰だよ?! 」」
天「2人ともうるさい。静かにして」
楽「なんでお前はそんなに冷静なんだよ!」
天「そうじゃないって事は、ボク達は知ってるでしょ」
それはそうだけど···
ー それは違います。それに、 ー
愛聖の答えの続きを聞く為に、オレ達はジッと耳を傾けた。