第5章 ヒカリの中へ
ー 今までは女優活動がメインだったと思いますがこれからは違う道も選択肢の中にあると言うことですか? ー
『違う道とは、どういった内容を意味されているんでしょうか』
ー 佐伯さんは以前、Re:valeのおふたりと曲を出されたり、他にもタイアップ関連の曲を出されてましたよね?そういった音楽活動の可能性を広げるという事もあるんですか? ー
音楽···そんな質問がされるとは思ってなかったから、なんて答えよう···
全くないとは言いきれないし。
実は千との約束があるから、1度だけならありますとも言えないし。
そんな事を言って、それはいつ約束したのか?なんて聞かれるのはもっと困る。
『諸々の予定は本当にこれからなんです。だから、音楽への道だけを選ぶという事はないと思います』
ー では、女優を続けられるという事で宜しいですか? ー
『それもまだ分かりません。お仕事がすぐ出来るとは思っていませんから。ただ、快く送り出して下さった八乙女社長や、私を受け入れて下さった小鳥遊社長の為にも出来る限り早く、どんな小さなお仕事でもひとつひとつ大切にして行きたいと思ってます』
今日···こうやってお披露目されたからと言って、明日から慌ただしくなるような予定が入る訳じゃない。
もしかしたら、ずっと何年も活動出来ないかも知れないって事もある。
だけど、万理の部屋で小鳥遊社長が見つけてくれた小さな輝きの欠片がある限りは、その輝きを曇らせたくはない。
自分の力で少しずつ磨いて、小さな欠片をたくさん集めて、誰もが眩しくて目を閉じるような···大きな輝きにしたい。
それがどんなに厳しくて、遠い道のりだとしても。
小「彼女の言うように、今はまだ予定という部分では詳細は決まっていません。ですが、これまでの彼女の頑張りと真っ直ぐ前を向く姿勢を考えたら、忙しさに逃げ出したくなるような日はそう遠くないと思います」
社長···?
まるで私が考えていた事を読み取ったかのように発言する社長に思わず顔を向けると、マイクのスイッチをそっと切りながら社長は私を見て小さく微笑んだ。
小「僕はこれでも、一応芸能人事務所の人間だよ?そんなに不安な顔はしないで···大丈夫、僕を信じて?」
ね?と更に微笑む社長の暖かさに触れながら、私はひとつ瞬きをして言葉の代わりに微笑みを返した。