第5章 ヒカリの中へ
小「本日は皆さんお忙しい中で、この場にお集まり頂いてありがとうございます」
社長が挨拶の言葉を話し出すのを、じっと動かずに聞いている。
移籍会見がどういった物かは初めての経験で、他のタレントさん達がどんな会見をしていたかなんてのも分からないから、流れに身を任せるのが1番かと思うし。
小「···なので、ご質問がある方はどうぞ」
挨拶の流れの最後に言えば、途端に取材陣がざわめき出した。
きっと急な移籍会見となれば、それなりに突っ込んだ質問が押し寄せるだろうと思うと、質問を聞く前から少しうんざりする気持ちが浮かび上がった。
ー 今回、移籍…とゆうことですが、どういう理由ででしょう? ー
来た···
どう答えたら1番いいだろうかと言葉に迷っていると、少しの間を開けてから小鳥遊社長がマイクを取った。
小「それは僕が質問にお答えしましょう。皆さんもご存知の様に彼女はこれまで八乙女プロダクションに籍を置いて活動してきました。ですがこの度、彼女自身の可能性の枠を広げるという形で思い切って移籍、という方法を選びました」
ー それは円満に、ということでしょうか? ー
小「もちろん、僕はそう思ってます」
ー では、佐伯さんにお聞きしますが、小鳥遊プロダクションに移る事に決めた理由は? ー
『そう、ですね···先程、小鳥遊社長が仰った様に私自身の可能性がどこまで広げられるか···そういった意味では1番活動しやすいかと思ったので』
小「そこは運命の人に巡り会ったから···とか言って欲しかったなぁ」
フフっと楽しそうに笑いながら、小鳥遊社長が私の肩に手を乗せる。
『そうですね、小鳥遊社長はある意味···私の運命の人かも知れません』
釣られるようにそう言うと、メディア席からも笑いが起こった。
運命の巡り合わせのように再会した万理がいて、その巡り合わせに引き寄せられるかの様に小鳥遊社長と会って···だから、そこは理由としては間違ってはいない。
ー 今後、小鳥遊プロダクションでは、どういった活動を予定してますか? ー
『今までのように···と言いたい所ではありますが、まだ細かい予定は立っていませんので···すみません···』