第5章 ヒカリの中へ
❁❁❁ 千side ❁❁❁
テレビ画面の中の愛聖を、モモがずっと見つめて動かずにいる。
確かにドレスアップした愛聖は綺麗だと思う。
僕が始めて愛聖に会ったのは、万に紹介された時で···まだ、パステルピンクのランドセルを背負っていた頃だった。
その頃に比べたら、愛聖はずっと大人になった。
僕やモモと、ちょっと大人なシーンを演じられるくらい、ね。
あの頃は、愛聖の母親はいつも仕事で留守がちで、女の子がひとりで留守番だなんて、ほっとけないだろ?っていう万のお節介癖で構ってるのかと思ってた。
けど···
万や僕の作り出す曲を聞いては嬉しそうにしたり、時には一緒に歌ったりしてるうちに、人見知りの僕の心にいつの間にか入り込んでて。
万がバイトでいない時は、僕が万の家で愛聖を待つようになって。
万がいた頃も、今も、そばに居て欲しいと思う存在にまで大きくなっていて。
やれやれ···愛聖、お前はいつも何かと僕の心をかき乱してくれる。
いまだってそうだ。
こんな白いドレスなんか着て···お嫁にでも行くつもり?
それに、そのメイクの感じ。
愛聖の良さをよく知ってるヤツが手を施したんだろう。
愛聖の今までのメイクとは感じが違うから、僕にはすぐ分かる。
じゃあ、誰?
そこまで考えて、苦笑が漏れる。
僕も案外、嫉妬心が強いな。
それは、モモに対しても···発動しかけたけどね。
もし、今度。
僕の知らないところで愛聖に手を出したら···
そうだな···身ぐるみ剥いでベランダから吊るそうか?
···なんて。
モモは僕の大事なパートナーだ。
それは万がいなくなった後から、ずっと。
そして、この先も···ずっとだ。
それより、まず確認しておかないといけない事があったな。
あの日、モモがいないところで愛聖とした約束。
モモの答えなんて聞かなくても分かるけど、一応ちゃんと聞いておいた方がいいから。
「モモ?」
百「うぇい?!」
···うぇい?
テレビの中の愛聖に釘付けになってるモモに声を掛けるとおかしな声が上がった。
「···なにその慌てた返事」
百「あ、いや···なんでもない!なんでもないけど、なに?!」