第5章 ヒカリの中へ
姉鷺さんが広間へ続く扉を開けると、まだ誰も中に入っていないというのに眩しい光が瞬いた。
小「さぁ、愛聖さん。僕の後に続いて歩いて来てね」
『はい···』
小鳥遊社長の言葉に、いよいよなんだ···と、小さく息を飲んだ。
少しずつ前に進んでいく小鳥遊社長の背中を見つめながら、高まる緊張で手足が硬直していく。
まっすぐ前を見るのも、その光の眩しさに視線を落とす。
···怖い。
一歩を踏み出す勇気が出ない。
八「下を向くんじゃない。お前はしっかりと顔を上げて堂々と胸を張って歩け。私はお前を、どこに出しても恥ずかしくない様に育てたつもりだ···違うか?」
姉「んもぅ、社長がそんな怖い顔して言ったら逆効果ですよ?あ、怖い顔は元からでしたっけ」
八「···姉鷺、お前は口を閉じろ」
失礼しました~と言いながらも、姉鷺さんが私に向けてペロっと舌を見せた。
それを見て思わず笑ってしまう。
八「それでいい。そのまま歩け」
『はい』
さっきまでガチガチだった手足に体温が戻って来る。
それもきっと、姉鷺さんと八乙女社長のやり取りで緊張が解けたんだと思うと、そんな小さなことでも胸が暖かくなった。
まっすぐ、姿勢正しく、1歩ずつ進む。
星の瞬きのような光の数々を浴びながら、数段ある階段の前で待っていてくれる小鳥遊社長の元に辿り着いた。
小「足元に気を付けてね、はい、お手をどうぞ?」
『お気遣いありがとうございます』
小「キミの後ろには、こわ~い顔した人が待ってるけど、慌てなくていいからね?」
にっこりと微笑みながら言う小鳥遊社長に、私も同じ様に微笑みを返し、差し出された手のひらに自分の手をそっと重ね、階段を1段ずつ上がる。
その光景に一層眩しさが増すのは、各メディアもここぞとばかりに仕事をしているということで。
ここから先が、正念場かな?と思わせる程のヒカリに包まれた瞬間だった。
私達が3人揃った所で一度深くお辞儀をして、促されるままに席に着く。
やっと、足元の不安から少しの間だけ逃れられる。
そうホッとした顔を見せれば、小鳥遊社長は私を見て小さく微笑んだ。