第1章 輝きの外側へ
万「分かった、よーし、分かった!愛聖、とりあえず落ち着こうか。じゃあ、はい。深呼吸して?すぅ~、はぁ~···」
『待って、落ち着くのは万理の方じゃない?私は別に何も焦ってないし。それに一緒に寝るくらい、そんなに慌てる事もないんじゃ?』
万「あるだろ、普通。俺達は昔からの顔馴染みとは言っても、お互い、その···まぁ、お年頃?とか」
私の歳を考えて、万理の歳を頭に浮かべる。
『···別に、大した問題でもなくない?』
万「いや、あるからね···」
『だって私、別にゆ、』
千とは、何もなかったし···と言いかけて、やめる。
万理は私と再会してから、一度も千の名前を口にしない。
そういう話の流れになっていなかったって事も考えられるけど、でも···
ずっと私の仕事をテレビで追い掛けてたって、言ってた。
だったら、私よりも遥かに露出が多い千やRe:valeの事だって見てるはずだ。
それはこの部屋のあちこちにある、千達の品々からも分かる事だから。
万「愛聖···」
妙なところで話を途切れさせた私に、万理が静かに声を掛けてくる。
言葉の続きは?と聞かれたら、更に言葉に詰まってしまうよ···
でも、そんな私の心配とは逆に、万理が言った言葉は···
万「分かった。愛聖の提案を聞こうかな」
そんな言葉だった。
『なんか、ゴメン···』
万「なにが?···あぁ、それよりさ?一緒に寝るのはいいんだけど、俺んち···枕が一個しかないから、まずは代用品を探さないとね?···あ、このクッションなんかどうだろ?フカフカだし、結構いい感じかもね?」
ポンポンっとクッションを叩きながら言う万理を見て、私はそんなものなくても大丈夫だよと笑った。
万「そう?でも···まぁ、いっか。愛聖がいらないって言うなら、それはそれでも。じゃ、夜も遅いし、寝ちゃおうか?」
『襲ったりしないから安心して?』
万「あのねぇ。それは普通、男のセリフ」
『じゃあ···何にもしないから、の方がいい?』
万「それも男の···って、愛聖?俺で遊ぶなよ···」
イタズラ心のままに言ったのがバレたのか、万理が苦笑する。
そしてその流れのまま、私達は同じベッドに潜り込んだ。