第5章 ヒカリの中へ
❁❁❁ 楽side ❁❁❁
移籍ってなんだよ!
そもそもアイツが愛聖を解雇したんじゃなかったのか?!
再活動するなら、わざわざ所属事務所を変えなくたっていいだろ!
ー ここ暫くメディアで佐伯 愛聖を見ないと思ってたら、移籍準備だったんですかねえ ー
ー どうでしょう···デビュー当時はどんな役柄でもこなす期待の新人女優!とか事務所から押されてましたけど。移籍って事はそれほどもう期待がないってことも考えられますよね ー
「勝手な事ばかりいいやがって!コイツらに愛聖の何が分かるって言うんだ!」
龍「楽、とりあえず落ち着けって」
天「そうだね。あのコメンテーター達に愛聖の詳しい事が分からないのと同じ様に、楽も、僕達も分からないんだからさ」
「クソっ···」
あの日。
Re:valeの2人から愛聖と連絡がついたと聞かされて。
その夜···テレビ電話を繋がれてちゃんと顔見るまで、どんだけ心配したと思ってんだ。
近いうちにちゃんと話でもと思っていれば···移籍?
ふざけんなよ。
···ひと言くらい、何か言ってくれれば良かったのに。
それとも俺は、そんな話が出来ないほど信用がないって事か?
あの2人には···話したのか?
天「ちょっと。いい加減その百面相どうにかしたら?···鬱陶しいんだけど」
龍「天、その言い方は良くない。楽だっていろいろ考えてるんだろ」
天「楽がいま何を考えてイラついてるのか知らないけど、だからって···今更足掻いても何かが変わる訳じゃない」
「···うるせぇよ」
そんなの俺が1番分かってるってんだ。
ー スタッフに動きがありました!間もなく会見が行われる模様です ー
ー 分かりました。会見の模様はまた中継を繋ぎます···それでは一旦CMです ー
テレビの中では軽快な音楽と共にどこかのメーカーの飲料水のCMが流れ出す。
普段なら適当に流しているような物でさえ、早く終わらないかとイラついてしまう。
龍「リハまではまだ時間あるみたいだし、何か飲もうか···」
気を使ってか、龍がいそいそと3人分のカップを並べてコーヒーを作り始める。
そんな姿でさえ、今は二の次状態で眺めていた。