第5章 ヒカリの中へ
❁❁❁ 天side ❁❁❁
「では、リハーサルの順番が来るまではこちらでお待ち下さい···コーヒーでも、お入れしますか?」
龍「ありがとう。あとは自分達でやるよ」
「分かりました。それでは私は打ち合わせに出てきますので、失礼します」
マネージャー代理が楽屋から出て行くと、楽が小さく息を吐いた。
「楽。本当はコーヒー飲みたかった?」
楽「違うっての。何か、アレだよな···いつもと違うマネージャーってのは、落ち着かねぇ」
「へぇ···楽はそっちの趣味もあるんだ?···幅広いね」
楽「それも違う」
ま、分かってるけどね。
楽の言う、いつもと違うっていうのは姉鷺さんじゃないってところで。
「僕は別に、マネージャーが誰だって構わないけどね。そんな事に振り回されるようじゃ···甘いんじゃない?」
楽「うっせぇな」
龍「今日は用事があるからって言ってたから。社長に直々に言われた仕事だって言ってた」
社長に、ねぇ。
それも一体どんな用事なんだか。
リハまで時間どれくらいだろうかと天井を仰いだ時、僕達3人のスマホが同時にラビチャの着信を告げた。
「マネージャーからだ」
楽「テレビをつけとけ?···なんの指示だよ」
龍「まぁそう言わずに。今つけるから」
ソファーに腰を下ろしかけた龍がリモコンを取り、ボタンを押す。
龍「つけたけど···どこの局を、とは書いてないよな」
龍に言われてもう一度メッセージ画面に目を落としても、たたテレビをつけろとしか書かれていない。
龍「楽!天!···これって···」
テレビ画面を見たまま僕達の名前を呼ぶ龍を見て、その流れで画面へと目を移す。
ー 私はいま、八乙女プロダクション所属の 佐伯 愛聖さんが、本日、所属事務所を移籍するという発表の会見が行われる会場に来ています。現在多くの報道陣の方が、会見が始まる時間を待っている状態ですね ー
楽「どういう事だ···これは」
龍「移籍···って?」
動揺を隠せない2人を横に、テレビ画面の中の番組司会者とリポーターの会話が流れて行く。
「ちょっと、あそこに映ってるのってマネージャーじゃない?」
会場の隅でスタッフと何やら話しているのは、間違いなくうちのマネージャー···
社長から直々っていうのは、この事だったのか?