第5章 ヒカリの中へ
なんだか急に緊張して来た···
会見会場に入るなんて、前は当たり前のようにしていたのに。
今はそれでさえ、右手右足が同時に出てしまいそうな程···カチコチになっている。
小「さ、着いた。ここが用意された控え室だよ」
前を歩く社長が足を止め、ひとつのドアの前で私を振り返った。
『控え室にしては、なんだか豪華な気がしますけど···?』
そう言いながらもドアの横に張り出されているプレートを見れば、そこには確かに。
《 佐伯 愛聖 様 》
···と仰々しく書かれている。
小「さぁ、ドアを開けてごらん。愛聖さんを待っているスタッフが···首を長くして、待ってるから」
スタッフ?
それって誰の事だろう?
ここに向かう時、事務員さん達は万理を含めて全員···事務所にいたよね??
それに紡ちゃんだって。
幾つかの疑問を抱きながら、勧められるままにドア。開けた。
姉「んもう、おっそいわよ愛聖!女の子は支度に時間をかけてキレイになるのが鉄則よ?」
『姉鷺さんっ?!···あ、え?···す、すみません間違えました!』
予想もしていなかった人の登場に、思わずドアを閉める。
『社長···部屋、間違えたみたいです』
ドアノブから手を離さずに言えば、社長はニコニコと笑って間違ってないよと私の手の上からドアノブを掴み押し開いた。
姉「ちょっと愛聖!イキナリ閉めるとか失礼ねアンタ!」
···なんで姉鷺さんがここにいるの?
目で訴えるように社長を見れば、その奥も見てご覧と言わんばかりに視線を黙って視線を動かした。
その先には···
『八乙女社長··まで』
見るからに不機嫌そうな顔をした八乙女社長が、普段とは違う類のスーツを纏い、長い脚を組んでイスにもたれ掛かっていた。
八「遅い。私をどれだけ待たせるつもりだ···現場は時間厳守が鉄則だと教えたのを忘れたのか?」
『すみません!以後気をつけ···あの、今日···私、八乙女社長とアポ···ありましたか?』
今日は移籍会見をする日で、1日中···小鳥遊社長とは同行する予定だったけど、スケジュールには八乙女社長との約束はなかった···はず?
小「八乙女、驚かすのはそれ位に。愛聖さんは彼女に支度を手伝って貰いなさい」