第5章 ヒカリの中へ
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
いよいよ今日か···
朝から忙しなく支度をしている社長にお茶を運び、窓から見える青空に目を細めた。
愛聖の新しい出発の日がこんなに晴れ晴れとしているなんて、とソワソワしてしまう。
そんな俺を見て社長も窓から空を見上げて、同じように目を細くした。
小「天気も味方につけるとか、愛聖さんは凄いね」
「ですね。事務所の事は俺が責任を持って留守番しますから、社長は何も心配しなくて大丈夫ですからね?」
小「何もかもを万理くんに任せっぱなしで申し訳ないけど、僕も今日の移籍会見で男を見せてくるから」
「中継、楽しみにしてます」
そう。
今日の愛聖の移籍会見は、元の事務所が大きな事務所だけあって···八乙女社長が会場を抑えてくれたり愛聖の衣装を用意してくれたりしたそうで。
会場へ着いてからのスタッフもそうだったし。
なぜそこまでしてくれるのでしょうか?と社長に問えば。
小「世間では冷たく鬼のようだと言われてはいるけど、八乙女はいい所もあるんだよ。特に愛聖さんにはね···一時的でも八乙女プロダクションの看板女優だったんだから」
···と笑っていた。
まぁ、各局などへの移籍会見の情報は社長に言われて俺が流したんだけど。
直後からそれに関する問い合わせの電話が鳴りっぱなしになったりと忙しい毎日を送って来た。
それも今日で終わり。
明日からはきっと、違う用件の電話が鳴りっぱなしになるといいな···なんて、そんな望みは早すぎるかな?と小さく笑ってしまう。
小「明日からは電話番を雇わなければならない位、忙しくなるかもね?」
心の中をスキャンしたかのように社長が笑う。
「そうだといいですけど···」
小「大丈夫。万理くんは心配性だなぁ···僕を信じて?」
僕を、信じて?···か。
あの日、同じように社長は俺に言ってくれたんだっけ。
小 ー 大丈夫。万理くんの選択は間違ってないと思うよ。僕が保証する···だから、僕を信じて ー
その言葉通り、社長は俺に···いろいろな事を見せてくれた。
だから···今回もきっと。
「社長、何があっても俺は社長に着いて行きますからね!」
大袈裟なくらいに言って、信じて着いてきた背中を見送った。