第1章 輝きの外側へ
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
シャワーから出ると、リビングでボンヤリとする愛聖がいた。
俺が最後に見た姿は、まだ確か···中学生、だったっけ。
ああやってメイクを落とした顔は、あの頃と変わらず幼い感じがするけど。
テレビで初めて見た時は驚いたっけ。
八乙女プロダクション期待の新人!とか言われて、どんな演技も体当たりでこなす愛聖をずっと応援しながら見てた。
未成年だから、まぁ···そういう類のシーンはなかったけど、メイクや衣装で大人びて行く姿を見ながらハラハラドキドキしてたっけ。
昔から、将来は女優になりたいの!とか言っては、隣に住む俺の部屋に遊びに来ていろんな話をして過ごしてた。
もちろん、宿題や勉強が終わらないとダメだって言って勉強を見てやったりもしたけど。
千が頻繁に来るようになってからは、あの人見知りな千ともあっという間に仲良くなって、三人で過ごす時間も増えていった。
俺が姿を眩ませたあの日。
ひと言くらい···とは思ったけど、いろいろな思いを断ち切るために愛聖にも黙って俺は姿を消した。
あの子はこれからいろんな出会いがある。
だから俺の事なんてすぐに、昔そんな人いたなぁ位の思い出の中のひとりになるだろうからって。
自分でも、笑っちゃうよな。
幾つも歳が下の女の子が、千と笑い会う度にチクリとトゲが刺さってた、なんて。
その愛聖がもう、大人の仲間入りする歳になってるとか。
月日が流れるのは···あっという間だ。
『はぁ···』
ため息?
「さっきから百面相してると思ったら、ため息とか?俺との同居、ホントは嫌か?」
ポンッと頭に手を乗せて笑うと、愛聖は驚いて振り返った。
『···いつから見てたの?』
「結構前、かな?難しい顔しちゃって、ほらほら、お子様は早く寝る!明日のことは明日考えなさい」
ツン、とおでこをつつき言えば、そんなにお子様じゃない!と頬を膨らます。
「お子様だろ?少なくとも、俺よりは」
『うるさいよ···万理お兄ちゃん』
「懐かしいなぁ、その呼び方。マリー?」
『あ、私がお子様って事は···万理はオジサ、』
「あ、コラ!俺はまだまだ若くて優しくてカッコイイ···お兄さんだから!」
そう言ってまた、おでこをつついた。