第1章 輝きの外側へ
『万理、シャワーありがとう』
濡れた髪にタオルを当てながら言えば、万理は驚きながら私を二度も三度も見る。
『えっと、なに??なんか変?!あっ!スッピンだから?!』
さっきまでは少なくとも軽くメイクをしていたから、スッピンが地味過ぎて驚かれたのかな?!
万「違う違う!そうじゃなくて···あ~、うん、まぁいいや」
歯切れが悪い万理を見て、何か変だったら気にせず言ってよと笑って見る。
『どうせスッピンが···とか、そういうことでしょ?』
万「そうじゃないよ。ただ···パジャマ代わりに出した俺のシャツが···いや、俺のシャツなんだけど···」
『万理のシャツが、なに?』
万「なんか、エロい」
エロ···い?!
『うわぁ···万理ってそういう事を考えてたんだぁ?···ヘンタイ?』
万「アホか!愛聖がパジャマ持ってないとか言うから!」
そんなこと言ったって、今まではシャワー浴びたら適当に髪乾かして、寝苦しくない服を来てベッドやソファーにゴロン···だったから。
でも確かに、鏡に写る自分の姿を見れば···いわゆる彼シャツとかいうのはこんな感じなんだろうかとも思えるけど。
『万理、安心して?···襲ったりしないから』
万「襲われてたまるか!まったく、シャワー浴びてくるから自由にしてて」
クスクスと笑いながら返事をして、軽く手を振ってみる。
···なんだか不思議。
さっきまでは人知れずこの世から居なくなってもいいとさえ思ってたのに、あの時···万理に助けられて。
ここに連れてこられて、私いま···笑ってる。
本当に不思議な運命の巡り合わせと、粋な神様に感謝しないと。
脱衣所から持って来たドライヤーをかけながら、そう言えば···と改めて部屋を見る。
今いる部屋と、キッチン。
···って事は?
あの扉のむこうは恐らくベッドルーム、だよね?
家主がいないのにドアを開けるわけには行かないけど、でも···どうやって暫く生活を共にするのだろう。
同じベッド、で?
私がまだ撮影とかで忙しくて少しでも寝る時間を確保したかった時には···本当に数回だけだけど、千の家に泊めてもらった事がある。
その時は、当然のように千に一緒に寝るよと言われて、特に深くも考えずに同じベッドで寝起きしたこともあるけど。