第1章 輝きの外側へ
確かに毎日知らない人が出入りしている漫喫とかビジネスホテルよりは全然安全かも知れないけど。
でも、もしもどこかで誰かにスクープでもされたら···万理にも、迷惑をかけてしまう。
万「どう?新しい家が見つかるまで、ここに住所を移せば就職活動だって出来るし。それに、俺も時間が不定期な仕事だから気を使わずにいてくれていいし···愛聖がイヤじゃなければ、の話だけどね?」
『仕事時間が不定期って、万理は何の仕事をしてるの?』
万「まぁ···いろいろと事情があって、今は小鳥遊事務所でお世話になってるよ」
小鳥遊···?
それって芸能事務所だよね?!
八乙女社長がいつも何かと目の敵にしてるところ!
『それなら尚更、同棲とかマズいんじゃ···』
万「あぁ、そうでもないよ?でも俺はタレントじゃないし、ただの事務員だから大丈夫だよ」
『だけど!』
万「じゃあ同棲じゃなくて、同居って事でいいんじゃないかな?ほら、一時期と俺と千がしてたみたいに。あの頃は大変だったなぁ、千は音楽以外は何も出来なくてさ。あ、知ってる?千ってさ、缶も瓶も全部同じ袋に捨てるんだよ。ゴミ出しの時に分け直すの面倒だったよなぁ」
それは、なんとなく想像できるけど。
何度言われても、同じようにゴミを捨てる千に小言を言う万理の姿が浮かぶ。
···違う。
そうじゃなくて!
万「お風呂とか自分の洗濯物とかは、気になるならオレがいない時に済ませてくれたらいいし?俺は全然構わないから。むしろ、お年頃の女の子を路頭に迷わせる方が気が引けるし、ね?どう?」
どう?って。
どうなの、それ?!
だけど万理が言うように、いつまでも住所不定無職ってのも···先々困る、よね?
でもなくて!
成人した大人の男女が、同じ部屋に寝泊まり?!
世間一般的にも、どうなの?!
見ず知らずの間柄って訳じゃないけど···どう、なの?
自分の中であぁでもない、こうでもないと格闘を繰り返した···結果。
『お、お世話になります』
そう言って頭を下げて降参した。
···奇妙な同居生活がスタートした瞬間だった。